歯を失ったときの治療手段となる入れ歯。自分の歯が残っていればそこにバネをかけ、「部分入れ歯」にすることができます。ところが、使用している人から、「バネをかけた歯がグラグラになってきた」という声が……。これは歯科医の処置に問題があったのでしょうか? 歯科医師で歯周病専門医の若林健史歯科医師に聞いてみました。

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 部分入れ歯はうまく使えていたのに、バネをかけている自分の歯に不具合が起こってしまう……。とても困ることですが、こうしたケースは意外に多いです。

 部分入れ歯は失った歯を補う治療法の一つです。1本から数本の歯がなくなった場合、健康な歯が残っていれば、部分入れ歯にできることがほとんどです。最近は金属のバネではなく、歯科用プラスチックでできた白いバネ(正確には、バネの代わりにピンクの床が歯を包むようにして支えるタイプ)など、目立たないタイプも出てきました。インプラントはまだまだ高額ですし、埋入にあたっては手術が必要です。こうしたこともあり、比較的に安価で、手術不要な部分入れ歯はニーズがあるのです。

 だからこそ、なぜ、バネのかかっている歯がグラグラになるのか、気になりますね。その理由を知るためにはまず、「部分入れ歯の構造」を理解する必要があります。

 部分入れ歯は歯ぐきのかわりをする「義歯床(しょう)」と、その上にのる「人工歯」、そして支える歯にかけるバネ、からなります。

 入れ歯でかんだ時の力は構造上、バネのかかった歯にもかかってくることは容易に想像がつくかと思います。歯に過度な力がかかると、歯を支える歯周組織を傷つけることがあります。これを「咬合(こうごう)性外傷」と言います。かみ合わせ不良や歯ぎしりなどでも起こることがあります。しかし、こうしたケースはよほど強い力が加わった場合です。

 また、歯がグラグラになるほどのダメージが起こることは基本的にありません。

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若林健史

若林健史

若林健史(わかばやし・けんじ)。歯科医師。医療法人社団真健会(若林歯科医院、オーラルケアクリニック青山)理事長。1982年、日本大学松戸歯学部卒業。89年、東京都渋谷区代官山にて開業。2014年、代官山から恵比寿南に移転。日本大学客員教授、日本歯周病学会理事を務める。歯周病専門医・指導医として、歯科医師向けや一般市民向けの講演多数。テレビCMにも出演。AERAdot.の連載をまとめた著書『なぜ歯科の治療は1回では終わらないのか?聞くに聞けない歯医者のギモン40』が好評発売中。

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