また、トラウマの内容によっては誰にも相談できないまま、20年以上もつらい症状に悩んでいる人もいる。PTSDは重くなると、自殺リスクが高くなる。このため小西医師は、次のように話す。

■親しい人に相談か施設利用も第一歩

「未受診の人はまずは精神科や心療内科を受診しましょう。『心の傷は一生治らない』とよくいわれますが、それは誤解であり、適切な治療を受ければPTSDは高い確率で回復します。多くの精神疾患の中でも治りやすい病気という印象を持っています」

 PTSDの発症予防として、トラウマ体験後のソーシャルサポート(周囲の人々から与えられる物質的・心理的支援のこと)が効果的であることが明らかになっている。トラウマ体験者はつらい気持ちをまずは信頼できる家族や友人に語ることが勧められる。

 一方、話を聞く側にもいくつか注意点がある。小西医師はこう話す。

「『なんでそんなところに行ったの?』などと被害者を責めないようにしましょう。こうしたやりとりが二次被害となって、PTSDの症状を悪化させることが少なくありません」

 また元村医師はこう話す。

「根掘り葉掘り聞くのではなく、傾聴に徹することです。トラウマに関連するリーフレットを一緒に読んであげるのもいいでしょう」

 睡眠を確保してもらい、食事や入浴など生活リズムを整えるようサポートすることも大切だ。からだがよい状態になることで回復する力も引き出されるからだ。

 性被害について、小西医師は各地域に設置されている「1(ワン)ストップ支援センター」の利用を勧める。

 これは性暴力の被害に遭った直後から、可能な限り1カ所で医療支援や心理カウンセリング、捜査関連手続きの支援などを受けることができる機関だ。

 国が2012年に運営の手引を定め、民間団体や地方公共団体が開設・運営している。

 施設の設置場所や支援内容は「内閣府男女共同参画局」のホームページ(http://www.gender.go.jp/)「女性に対する暴力の根絶」で見ることができる。

(ライター・狩生聖子)