田原総一朗氏(C)朝日新聞社
田原総一朗氏(C)朝日新聞社

――河野氏、石破氏、小泉進次郎氏の「小石河連合」が負けた原因は何でしょうか?

 世論調査では河野さんの支持率が高かった。これは、これまでの自民党、もう少し言えば、安倍路線の政治を変えてくるのではないか、という国民からの期待だったと思う。
 だけど、これだけにとどまってしまった。つまり、どう変えるのか、ビジョンと政策をしっかりと示しきれなかった。これでは与党の批判ばかりをしている野党と同じで、大きな流れにはならないですよ。

――岸田氏を政治家としてどう評価していますか。

 河野さんと違って、個性的ではない。安倍さんからすれば、安心感がある、使いやすいと思っているでしょうね。少なくとも、脱原発、女系天皇とは言わないから。
 ぼくは変えないといけないものが2つあると思っている。一つは、日本経済。もう一つは地球環境。
 日本経済をこれからどう立て直していくか、温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルにどう取り組んでいくか、岸田さんからは何も出てきてない。考えてないんだろうね。

――コロナ対策に対する不満で、菅首相は国民からの支持を失いました。岸田氏の課題は?

 コロナ対策で、菅さんの支持率が上がらなかった理由は、海外ではどの国も有事として対応して、罰則規定を設けて、ロックダウン(都市封鎖)した。それに対して、日本は平時の対応のままで、結局、感染拡大を許した。それが支持率の低下にもつながった。安倍さんが首相のときに「なぜ罰則規定を設けないのか」と尋ねたら、「そんなことしたら政権がもちませんよ」と苦笑していましたよ。
 岸田さんもそこまで踏み込まなければ、菅さんと同じようになると思いますよ。安倍さんがそれをどこまで考えているかですね。

――岸田さんで自民党は変わるでしょうか。

 岸田さんは変えるつもりはないよ。自民党の国会議員も党員も、今の自民党を変えたくないから、河野さんではなく、岸田さんを選んだ。
 二階(俊博)さんも最後は勝ち馬の岸田さんに乗った。岸田さんのせいで、幹事長から退かされたにもかかわらず。権力の世界は、負ければ何もないからね。二階さんの影響も残りますよ。

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「高市さんの幹事長抜擢はない」