青いウミガメが描かれた全日空機「フライングホヌ」。9月24日、成田空港の滑走路に亀が侵入した影響で離陸が遅れた(全日空提供)
青いウミガメが描かれた全日空機「フライングホヌ」。9月24日、成田空港の滑走路に亀が侵入した影響で離陸が遅れた(全日空提供)

 9月24日昼前、成田空港の滑走路に亀が侵入する珍事が起こった。その影響で約10分間、滑走路が閉鎖され、5便の離陸に遅れが生じた。このお騒がせものの亀の正体とは?

 成田国際空港会社によると、亀が発見された場所は「成田市さくらの山」に近い、A滑走路の北端。離陸直前の日航機のパイロットから「亀が歩いている」と連絡があった。ただちに、滑走路を閉鎖して空港職員が出動。亀を捕獲した。この影響によって遅れが生じた出発便のなかには機体に青い亀が描かれた全日空機「フライングホヌ(空飛ぶウミガメ)」があった。

 同機の客室乗務員は「亀の飛行機に乗務している際に亀に出合うなんて思わなかったです。お客様もクルーも非常になごやかな雰囲気で出発することができました」と、粋なコメント。

 このニュースが伝えられると、ほっこりしたコメントがSNS上に多数投稿された。

「彼は憧れのウミガメ(ホヌ)に会いたかったのだ」 

「この亀は飛ぼうとしたんだよ、きっと」

「どちらも、無事でよかった」

「ほのぼのとした絵ですね」

■愛らしかった「ミドリガメ」が 

 しかし、実はこの亀、アメリカザリガニと並んで、最悪の外来生物といわれる、ミシシッピアカミミガメ(以下、アカミミガメ)だったのだ。「亀の種類は環境省に問い合わせて確認しました。たぶん、滑走路近くにある調整池からやってきたのではないか」と、空港職員は言う。

 教えてもらった場所をグーグルマップで見ると、A滑走路の西側に雨水を集めるための池が設けられている。長さ約400メートル、幅約50メートル。この池から滑走路の北端まで1キロほどもある。

 通常、アカミミガメの移動範囲は半径500メートル以内だが、それ以上の距離を移動する個体もいるという。捕獲された亀は全長約30センチ、重さ約2キロと、かなり大きかった。 

 環境省外来生物対策室の前田尚大さんによると、もともと、アカミミガメはアメリカ南部に生息していたもので、幼体がペット目的で大量に輸入され、「ミドリガメ」として販売された経緯がある。「輸入が始まったのは1950年代の後半。もっとも多かった90年代半ばには年間100万個体にも達していたようです」と、前田さんは言う。 

 筆者も昔、夏祭りの「亀すくい」の露店でミドリガメをよく見かけた記憶がある。甲羅の大きさは5センチほど。鮮やかな緑色のかわいらしい亀は子どもたちに大人気だった。しかし、こんなに巨大に成長するとは、まったく想像しなかった。 

「とても飼いきれない、ということで、野外に放されてしまうケースが多かったのではないかと思われます」(前田さん) 

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