■浜田の“蹴り”が批判されないワケ


 笑いのカリスマとしてわが道を突き進む相方・松本と比べても、浜田はいつも楽しげに番組を楽しんでいる印象だ。「このコントラストがダウンタウン最大の魅力」と語るのは、多くのバラエティー番組を抱える放送作家だ。

「今更ダウンタウンを寸評するのもおこがましいですが、笑いの求道者として今もなお新しいことに挑戦し続ける松本さんに対して、浜田さんには笑いを突き止めようという気持ちが一切ない。実際、浜田さんは『M-1グランプリ』などの賞レースはほとんど見てないと番組で語っていたほど。しかし、キャラがかぶらず、いいバランスを取り続けることこそがコンビ継続の秘訣。ダウンタウンは奇跡のバランスでこの40年近くをやってきたといっても過言ではないでしょう。浜田さんがすぐ共演者の背中を蹴ったりするのも、『仲良くなるために一回蹴る』という浜田さんならではのコミュニケーション術だと松本さんはわかっている。浜田さんのキャラクターの輪郭を愛情も加味しながらしっかり浮き彫りにし、コンビのコントラストを明確にしていく手法は、もはや名人芸の域です」

 お笑い評論家のラリー遠田氏は浜田の人気が衰えない理由をこう分析する。

「浜田さんの芸人としての魅力は、自由奔放で荒々しい言動と、それを補って余りある愛嬌(あいきょう)でしょう。共演者に対してツッコむときには『しばくぞ』『殺すぞ』などとキツい言葉を使ったり、にらみつけたり頭をはたいたりすることもありますが、そこに何とも言えないかわいげがあるので、嫌な感じがしません。また、浜田さんは自分がMCを務める番組ではよく笑っています。特に、キツい言葉を放った後には必ずと言っていいほどフォローの意味を込めて笑顔を浮かべます。それが『緊張と緩和』の役割を果たし、番組全体が和やかな雰囲気になります。最近では、暴力的な笑いの取り方は敬遠される傾向にありますが、浜田さんだけは“治外法権“のように今まで通りの芸風を貫いています。それが世間からほとんど批判されることがないのは、圧倒的に愛嬌のがあるからなのです」

 先ごろ、2006年以来続いていた大みそか恒例の「笑ってはいけない」シリーズの休止が発表されたばかり。一部で「痛みを伴う笑い」に対する世論の変化が原因と言われている。しかし、浜田に関しては、従来通りのスタイルでまだまだ活躍が続きそうだ。(藤原三星)

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藤原三星

藤原三星

ドラマ評論家・芸能ウェブライター。エンタメ業界に潜伏し、独自の人脈で半歩踏み込んだ芸能記事を書き続ける。『NEWSポストセブン』『Business Journal』などでも執筆中。

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