ただ『スターズ・オン・アイス2021』オープニングのセルフコレオにあたり、羽生は自らの良さが出る振付を考えたとも話している。10代の頃から音楽をとらえる感性に非凡なものを感じさせていた羽生は、クラシックからロックまで様々な曲を使ったプログラムを滑り、そのすべてで羽生ならではの表現をみせてきた。その結果、自分らしいプログラムとして羽生が滑っているのが『天と地と』であり、今季新しく用意する予定のショートプログラムになるはずだ。競技人生をかけて様々なものから学び、なおかつ羽生らしさを追求してきた表現の到達点が今季のプログラムになるだろう。

 五輪連覇というこの上ない経歴を既に手にしている羽生は、誰も跳んだことがないジャンプと自分にしかできない表現を追求することで、フィギュアスケートの真髄を究めようとしているのかもしれない。(文・沢田聡子)

●沢田聡子/1972年、埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。シンクロナイズドスイミング、アイスホッケー、フィギュアスケート、ヨガ等を取材して雑誌やウェブに寄稿している。「SATOKO’s arena」