※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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睡眠中に呼吸の停止をくり返す「睡眠時無呼吸症候群」。そのほとんどは、何らかの原因で気道がふさがることで起こる「閉塞性」だ。この病気の原因と正しい診断の重要性、予防法などを専門医に聞いた。

【データ】睡眠時無呼吸症候群の主な症状は?治療法は?

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 睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは、眠っている間に呼吸が止まることをくり返す病気だ。SASは原因により、「閉塞性」「中枢性」に分けられる。

 閉塞性は、何らかの原因で空気の通り道である気道がふさがれることで呼吸が止まり、いびきや日中の強い眠気などの症状がみられる。一方、中枢性は、脳からの「呼吸をしなさい」という指令が正しく出なくなることで呼吸が停止する。気道が閉塞しないため、いびきはみられず、心不全や脳卒中などの既往がある人に起こりやすいとされる。

 SASの約9割は閉塞性であり、その最大の原因は「肥満」だ。太っている人は首やのどまわりの脂肪が多く、気道が狭くなりやすい。加齢などにより舌を支える筋力が低下することや、扁桃肥大、舌が大きいことや鼻の通りが悪いことなども気道閉塞の原因になる。

 一般的に、SASは中高年の男性に多く発症する傾向があるが、「高齢になると女性にも増える」と千葉大学病院呼吸器内科准教授の坂尾誠一郎医師は話す。

「SASの発症は、50代半ばぐらいまでは女性より男性のほうが4~5倍多いといわれます。女性は、プロゲステロンやエストロゲンなどの女性ホルモンが呼吸中枢を刺激するため呼吸障害が起こりにくく、SASになりにくい傾向があります。しかし、女性ホルモンが減少する閉経後には女性も発症しやすくなり、50代以降では女性の患者数も増加します」

 また、顔の骨格も気道閉塞の要因となり、あごが小さい人や下あごが後退している人、平面的な顔の人などは構造上、気道が閉塞しやすいとされる。日本人にはそのような骨格を持つ人が多い傾向があるため、SASになりやすい人種ともいえる。虎の門病院睡眠呼吸器科医長の富田康弘医師は、こう話す。

「SASのいちばんの原因は肥満ですが、骨格の条件などにより、やせている人でもなることがあると知っておいていただきたいです。SASは肥満や骨格の問題に加え、呼吸の不安定さや脳の覚醒のしやすさなど、さまざまな要因が複雑に絡み合って発症する病気といえるでしょう」

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