Bさんが海外での医療ボランティアに興味を持っていることを話すと、1人が、その経験がある知人がいると教えてくれたため、後日、Zoomミーティングで話を聞くことになった。


 1度目のZoomミーティングで、Bさんはその経験者からボランティアの話をたくさん聞いた。ただ、経験者の話はなぜか途中から「自分の軸を持とう」と、テーマがそれていった。


 2度目のZoomミーティングでは、その「自分の軸」について話し合った。が、相手の話はまた大きくそれた。


「私の軸は、愛が根底にあるの。よかったら聖書を読んでみない?」


 そのとき、Bさんは入学式のオリエンテーションで、演劇部員がカルト宗教の勧誘について、寸劇で実演しながら注意を呼びかけていたことを思い出した。不安を感じたBさんは大学に相談。大学側は摂理メンバーによる勧誘の可能性が高いことを確認した。


「全国の多数の大学で、現役大学生や卒業生の摂理メンバーによる勧誘が活発化しています。中でも狙われているのは医学部生や法曹界を目指す大学生。また、SDGsや環境問題、国際貢献やボランティア活動に関心の高い、意識の高い学生たちです。摂理は信者を増やすため、将来、社会的に影響力を発揮しそうな優秀な学生を狙っているのです」


 そう危機感をあらわにするのはカルト宗教に詳しく、大学生らにその危険性の啓発を続けている枝光キリスト教会の岩崎一宏牧師だ。


 宗教団体による大学キャンパス内での勧誘は昔からあった。ただ、コロナ禍でそうした活動は停滞しているかと思いきや、逆に摂理は、日本での活動を活発化させているというのだ。


 摂理は1978年ごろ、教祖の鄭明析氏が韓国で立ち上げたとされ、日本では1980年代中ごろから布教活動が始まった。鄭氏は信者の女性たちに性的暴行をした疑いが発覚し、2006年に日本でも大きく報じられた。全国の大学に信者がいることがわかり、各大学が対策に乗り出すなど、一時は社会問題にも発展した。

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勧誘した若者を「教育」していく