日本郵政の看板(C)朝日新聞社
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 古い体質や慣習を残しながら、隠然たる影響力を握っている任意団体の郵便局長会―-。

 郵便局長による犯罪や不祥事が続発していることから、これまで隠されてきた組織の実態が注目されている。

 <これ以上、局長による犯罪等の不祥事の発生を許すわけにはいかない。犯罪の撲滅には、会員の皆さんも熱い思いを持っていると思っている。是非とも一緒にこの難局を乗り切っていきたい>

 そんなメッセージが7月下旬、全国約1万9千人の郵便局長に向けて発信された。発信主は、局長の頂点に立つ全国郵便局長会の末武晃会長だ。

 局長会とは、約1万9千人の郵便局長らでつくる任意団体。全国郵便局長会を筆頭に、12の地方郵便局長会、約240の地区郵便局長会、約1600の部会で構成するピラミッド組織だ。

 冒頭の文面によると、5月に開いた全国郵便局長会の通常総会で、末武氏は「何よりも局長による犯罪の続発が大きな課題だ」と語っていた。それにもかかわらず、6月以降に局長による不祥事や逮捕が相次ぎ、危機感を強めていたのだ。文面はこう続く。

 <かんぽ生命の不適正募集の問題では、日ごろからの地道な努力と活動により、局長への信用・信頼が大きく損なわれていなかったと多くの皆さんは肌で感じていたと思う>

 <しかし、局長による犯罪が連日のように報道され、局長のパワーハラスメント事案が非常に大きな問題として取り上げられている現状では、そのように言うことは困難と言わざるを得ない>

 末武氏はさらに、会員間のコミュニケーションを活発にして「風通しの良い組織」とすることが防止対策の要だと訴え、新たに実施する「地方会役員、地区会役員による対話、点検、指導の強化」への協力を求めている。だが、そんな呼びかけの矢先、今度は指導や点検をするはずの役員による不祥事まで浮かびつつある。

◆世襲局長たちの事件簿

 末武氏のメッセージ発信に先立つ6月14日には、多数の顧客や知人から20年以上にわたり、12億円超をだまし取っていた長崎住吉郵便局(長崎市)の元局長の男(68)が詐欺容疑で長崎県警に逮捕された。父親と息子と計3代にわたる「世襲局長」で、一部の詐取行為は退職後、息子が局長在任中の郵便局内で行われていた。

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