血中酸素濃度が低下しても自覚症状がない人がいるので注意だ※写真はイメージです(Getty Images)
血中酸素濃度が低下しても自覚症状がない人がいるので注意だ※写真はイメージです(Getty Images)

 新型コロナウイルスの患者には、「ハッピー・ハイポキシア」(幸せな低酸素症)と呼ばれる症状が報告されている。本来、肺炎が悪化して血液中の酸素濃度が低下すると息苦しさを訴えるが、「ハッピー・ハイポキシア」の人は呼吸困難を感じにくい。自覚症状から軽症と判断されて自宅療養している人の中には、気づかぬうちに悪化し、助けを呼ぶのが遅れてしまう恐れがあるため、注意が必要だ。

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 なぜか軽症と判断されて自宅療養しても、症状が悪化して急に亡くなる人がいる。何かしらの合併症により急変することもあるが、中には「ハッピー・ハイポキシア」により気が付かずに症状が悪化したケースが含まれていてもおかしくはないという。

 日本感染症学会の指導医でもある東京歯科大学市川総合病院の寺嶋毅教授(呼吸器内科)によると、この症状は「ハッピー」と名付けられたものの、患者にとってはまったくハッピーとは言えない状態のため、後に「サイレント・ハイポキシア」として学術論文では言及されているという。

「本来、呼吸困難はとても苦しい症状です。新型コロナの患者に診られる症状で、本人が苦しさを感じないことを『ハッピー』と表現したようですが、どちらかというと、気が付かずにいつの間にか忍び寄る様子から、現在は『サイレント』の方が適しているとされています」(寺嶋教授)

 呼び方を改めて、静かに忍び寄る「サイレント・ハイポキシア」の患者は、血液中の酸素濃度が低下していても、息苦しさを訴えないことがあるようだ。

「実際に入院してきた高齢の患者さんに、血中の酸素濃度が85~90%でも苦しそうな様子を見せない人がいました。息苦しさをたずねても、『そんなことない』というように自覚症状もないのです」(同)

 また、血中酸素飽和度を測るパルスオキシメーターが保健所から届いて試してみると、90%以下の数値が出て、初めて症状の悪化に気が付く人もいるようだ。90%以下だと普通ならば、疲れやすくなり、トイレに行ったり階段をのぼったりした後に、息が上がって呼吸が落ち着くまでにしばらく時間がかかる。そして、いつの間にか、呼吸回数がはやくなり、肩で「ハーハー」と呼吸するようになる。酸素が取り込めない気がして、一生懸命呼吸しようとするといった感覚があるはずなのだ。

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