この相談を読んだ多くの人が、「いじめはそもそも許しがたいのに、障害のある子をいじめるなんてのは、言語道断、絶対に見過ごさない」と思ったり、「なるほど。なるべく障害のある子と一緒に過ごす時間を作ればいいんだ。そして自然に接してみればいいんだ」と思ってもらうことが、この国の多くの人の意識を変えていくことだと思っているのです。

 名作映画『チョコレートドーナツ』を見る前と後で、ダウン症児に対する意識がまったく変わった知り合いがいます。人は、知ることで変わる可能性があるのです。

 どうですか。くじらさん。

 長い道ですが、少しずつ少しずつ、当事者の思いを伝え、本当の姿を知らせていくことが、ぶつけられる悪意を減らす一歩だと僕は考えているのです。

 そのためにも、僕自身、作家・演出家として、できることはしようと思っています。

 くじらさんの子育てを心から応援します。

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鴻上尚史

鴻上尚史

鴻上尚史(こうかみ・しょうじ)/作家・演出家。1958年、愛媛県生まれ。早稲田大学卒。在学中に劇団「第三舞台」を旗揚げ。94年「スナフキンの手紙」で岸田國士戯曲賞受賞、2010年「グローブ・ジャングル」で読売文学賞戯曲賞。現在は、「KOKAMI@network」と「虚構の劇団」を中心に脚本、演出を手掛ける。近著に『「空気」を読んでも従わない~生き苦しさからラクになる 』(岩波ジュニア新書)、『ドン・キホーテ走る』(論創社)、また本連載を書籍にした『鴻上尚史のほがらか人生相談~息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋』がある。Twitter(@KOKAMIShoji)も随時更新中

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