とても残念なことですが、問題を一気に解決するような万能な策はないでしょう。

 ただ、「次善の策」はいくつかあると思っています。

 そのひとつは、これもくじらさんが書かれている「周りの子供たちが障害に対してフラットな『いろんな子がいて当然だよね』という意識を持って成長して」くれる環境を用意することでしょう。

 そのためには、「ハンディキャップがある子が当然に身近にいる環境」で、子供だけでなく大人も生活できることですよね。

 僕は小学生の時、商店街が主催したツアーに一人で参加しました。祖父母は米穀商を営んでいて、商店街のまとめ役だったのですが、祖父母も両親も参加せずに、何故か僕一人だけが誘われました。たぶん、キャンセルが一人出て、「じゃあ、鴻上さんのところの孫を入れてあげよう」となったんじゃないかと、今となっては想像しています。

 他の参加者は、みんな商店街の人達とその友達や関係者でした。

 旅館に着いて、いきなり、一人の男性に話しかけられました。30歳前後に見えましたが、言葉がはっきりせず、何を言っているのか、よく分かりませんでした。

 小学生だった僕は身構えて、身体が強張りました。

 すると、ツアーに参加した人が、その男性に「どうしたの?」と声をかけました。

 その男性は一生懸命、声をかけた人に話しました。

「ははあ。君はお米屋さんの孫なの?と聞いているよ」

 と、にっこり笑って、その人は僕に説明してくれました。

 僕はあらためて、男性の顔を見ました。満面の笑みで、僕にむかってうなづいていました。僕もあわてて、うなづきました。

「よしちゃんの言ってることは分かりにくいんだけど、よく聞けば分かるから」。説明してくれた男性は、あっさりとそう言いました。

 部屋は、男達数人の相部屋でした。

 食事の後、中学生や高校生、そして大人達とよしさんが一緒になってワイワイと話していました。

 よしさんが必死になって何かを話し、高校生が「よしさん。何言ってるか分かんねーよ」と笑いながら突っ込み、よしさんがその言葉を聞いて大笑いし、大人が「いや、俺は分かる!」と解説し、でもよしさんが「ちがう」と訂正して、会話は続きました。

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鴻上さんの衝撃的な体験とは