放送作家の鈴木おさむさん
放送作家の鈴木おさむさん

 放送作家・鈴木おさむさんが、今を生きる同世代の方々におくる連載『1970年代生まれの団ジュニたちへ』。今回は、見ていてワクワクしたテレビ番組について。

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 フジテレビ大型特番「FNSラフ&ミュージック~歌と笑いの祭典~」で一番ざわついた瞬間は、間違いなく、松本人志さんがいきなり内村光良さんに電話するところだったと僕は思う。

 二夜連続で放送していたこの番組の中で、一夜目に、出演者がいきなり芸能人に電話して、明日出演できないかブッキングしようという企画があった。

 いろんな会議でいつからか「予定不調和」と言う言葉を聞くようになった。予想だにしないドキドキすることを起こそうということなのだが、会議でこの言葉が出てる時点で「予定不調和」じゃないじゃないか!と思ってしまう。だから僕はこの言葉が大嫌いだ。

 だが、この電話企画はまさにそれ。「予定不調和」である。

 松本さんが内村さんに電話して、「あれ出ないのかな?」くらいコールして、内村さんが出て、スタジオのみんなが慌てている。翌日、来れるか?来れないか?の話になると、日本テレビでは夜8時から「イッテQ」があるため、ここでは返事ができないというリアリティー。見ていてとてもドキドキした。

 そして、翌日、番組終盤近くになり、内村さんはスタジオに登場し、みんな大興奮。松本さんと内村さんの久々の2Sはエモかった。

 僕は高校生の時に、ウッチャンナンチャンさん、ダウンタウンさん、清水ミチコさん、野沢直子さんが出演していた「夢で逢えたら」を見て、強烈に「こういうものを作る仕事につきたい」と思い、放送作家を志した。そんな僕からしたら、時を経て、この2人が隣同士に座っているのは熱くなった。テレビを見てこんな気持ちになることも少ない。

 この企画の何がすごいか。ここが一番のポイントだと思うんですが、あけて月曜日以降の会議で、必ずこの話になる。そのポイントは「松本さんの内村さんの電話って、本当にマジなんですかね?」というもの。テレビでいきなり電話する企画って、事前に仕込んでいることが多い。だからこそ、みんな思う。仕込んでる電話ってすぐにわかる。だけど、放送作家歴30年の僕から見ても、あの電話には「いきなり」のリアリティーがあった。あれがリアルかリアルじゃないのか?と大の大人が何人も集まって話してしまう。それこそがテレビだよなと思った。そんなことを話したくなってしまう。プロが集まってこんな話をしてること自体が、もう大成功ってことですよね。

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鈴木おさむ

鈴木おさむ

鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。

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