鬼丸さんは日本全国で年間平均150回ほどの講演活動を実施しながら、多くの支援者を募っています。鬼丸さんのお話を聞くと、ご本人の温かいパッションを心身ともに感じることができて、毎回毎回、気持ちが晴れます。

 鬼丸さんは提唱します。「我々は微力であるかもしれないが、決して無力ではない」と。

 これは、渋沢栄一の合本主義である「一滴一滴が大河になる」という考えに共振しています。一滴は微力であり、何もできない。けれども共感による足し算、共創による掛け算により勢力になれる。こんな活き活きとした天命のドラマです。

 天命を全うした渋沢栄一は唱えました。

「いかに人が神に祈ればとて、仏にお頼み申したからとて無理な真似をしたり不自然な行為をすれば、必ず因果応報はその人の身の上に廻る来るもので、到底これを逃れるわけにゆくものでない」

 天罰をくらった状況に陥ったと神に祈るのではなく、政府や会社に解決や答えを安易に求めるだけでもなく、己の心から天命のささやきが聞こえてくるかに意識を配ることが大事であると言っているようです。

 でも、自分の天命なんてわからないじゃないか。その通りだと思います。しかし、自然なんてわからないもので、我々人間はごく一部しか見えていません。わからないから存在していないということではありません。わからないから降参することでもない。

 わからないからこそ問いが生じ、問いを答えようとするから新しい世界が拓けてくるのです。(渋沢健)

◆しぶさわ・けん シブサワ・アンド・カンパニー株式会社代表取締役、コモンズ投信株式会社取締役会長。経済同友会幹事、UNDP SDG Impact 企画運営委員会委員、東京大学総長室アドバイザー、成蹊大学客員教授、等。渋沢栄一の玄孫。幼少期から大学卒業まで米国育ち、40歳に独立したときに栄一の思想と出会う。近著は「SDGs投資」(朝日新聞出版)

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渋沢健 シブサワ・アンド・カンパニー株式会社代表取締役、コモンズ投信株式会社取締役会長。経済同友会幹事、UNDP SDG Impact 企画運営委員会委員、等。渋沢栄一の玄孫。幼少期から大学卒業まで米国育ち、40歳に独立したときに栄一の思想と出会う。

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