※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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みどり小児歯科院長の和気裕之歯科医師(日本大学客員教授)
みどり小児歯科院長の和気裕之歯科医師(日本大学客員教授)
神奈川歯科大学総合歯科学講座の教授で同大学附属病院・包括的咬合機能回復外来の玉置勝司歯科医師
神奈川歯科大学総合歯科学講座の教授で同大学附属病院・包括的咬合機能回復外来の玉置勝司歯科医師

 舌の痛みやかみ合わせの違和感を訴える「歯科心身症」に対して、漢方治療をおこない改善させる歯科医師がいる。歯科での治療といえば、歯を削ったり抜いたり、また、入れ歯を作ったりするなどのイメージが強いが、実は漢方薬も使うことができる。近年、漢方で効果を期待できる症状が多いことがわかってきている。漢方治療を取り入れている歯科医師を取材した。

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 歯科心身症とは、「口やあごなどにあらわれる症状(不調)のうち、経過に心理面や社会面の要因が密接に影響している状態」を指す。特定の病気ではなく、状態を指す用語だ。

 この分野の専門家である、みどり小児歯科院長の和気裕之歯科医師(日本大学客員教授)は次のように話す。

「歯科の病気はすべてからだの問題だけではなく、心の問題や社会的な問題も関わっていますが歯科心身症は舌痛症や特発性歯痛など、原因がはっきりしない機能的な病気で起こりやすいのが特徴です。通常の歯科治療だけではよくならないため、長期間治療を受けていたり、ドクターショッピングを繰り返したりする患者さんが多くみられます」

 舌痛症はこうした状態の中で最も頻度が高く、心理的な問題や社会環境の問題が影響する場合がある。文字通り舌が痛む病気で、舌の先や側面のひりひり感が慢性的に続き、気になって仕方がない。

 痛みは食事中や何かに集中しているときは忘れていることが多く、朝よりも夕方から夜にかけて強くなる傾向がある。中高年の女性に多く、閉経後の女性の有病率は12~18%という報告もある。

「舌痛症は口内炎やドライマウス、カンジダ症、舌がんなど、考えられる病気をすべて除外して、原因が見つからない場合に診断します。患者さんは来院時に、悪い病気ではないかとすごく心配している人が多いですね」(和気歯科医師)

 問診や心理検査では、「心配性でこだわりやすい」「病気に対する不安が強い」「過去に強いストレスを受けた」「不安やうつ状態」といった結果が出る傾向がある。

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