4回途中3失点と苦しんだ先発の田中将大 (c)朝日新聞社
4回途中3失点と苦しんだ先発の田中将大 (c)朝日新聞社

 延長10回タイブレークに持ち込まれたアメリカとの準々決勝は甲斐拓也(ソフトバンク)のタイムリーで日本がサヨナラ勝ちをおさめた。8回を終了した時点で1点ビハインドという苦しい展開ながら、抑えのマクガフ(ヤクルト)を攻めて同点に追いついた粘りは見事だったと言えるだろう。

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 逆転勝利の大きな要因となったのはやはり打撃陣だ。オープニングラウンド初戦のドミニカ戦では全体的に硬さが目立ち、試合終盤まで得点を奪うことができなかったが、この日は序盤からチャンスを多く作って見事に先制。中盤には最大3点差をつけられたものの、すぐに1点差に迫るなど効果的な攻撃が目立った。

 特に大きかったのがアメリカ投手陣の力のある速いボールに振り負けなかったということだ。相手先発のバズはコンスタントに150キロを超えるストレートを誇り、適度に荒れていることからも攻略は簡単ではないように見えたが、立ち上がりから坂本勇人巨人)、柳田悠岐(ソフトバンク)が力負けせずにしっかりととらえてヒットにできたことが他の野手陣にも勇気を与えたことは間違いないだろう。初回のチャンスで併殺打に倒れていた吉田正尚(オリックス)が第2打席ですぐに先制タイムリーを放ち、挽回したということも非常に大きかった。

 そして最も明るい材料はやはり主砲の鈴木誠也(広島)のホームランだろう。ここまでの2試合でスタメン出場した選手の中で唯一ノーヒットに終わっており、打撃の内容もよくなかったが、5回裏に飛び出したホームランはなかなか飛ばないと言われるボールの影響を全く感じさせない見事な一発だった。またこの一発は3点差に引き離された直後の場面で飛び出したものであり、アメリカに傾きかけた試合の展開を引き戻すという意味でも非常に価値の高いものだった。結局鈴木のヒットはこのホームランだけだったが、1本ヒットが出たことで9回に同点に追いつくきっかけとなる四球を選べたことにも繋がったと言えるだろう。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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