侍ジャパンの鈴木誠也(写真/gettyimages)
侍ジャパンの鈴木誠也(写真/gettyimages)

 劇的な勝利から中2日で迎えたメキシコ戦は、初戦の逆転勝ちの勢いが感じられる展開となった。初回に先発の森下暢仁(広島)がいきなり1点を失ったものの、直後の2回表に森下をリードする甲斐拓也(ソフトバンク)のタイムリーで同点に追いつくと、続く3回には坂本勇人巨人)がピッチャーゴロの間に生還する好走塁を見せて逆転。4回には山田哲人(ヤクルト)にスリーランが飛び出して一気にリードを広げ、10安打7得点と効率の良い攻撃でメキシコ投手陣を圧倒した。

 まず大きかったのが1、2番を打つ山田と坂本がともにホームランを含む2安打と見事な活躍を見せたことだ。初戦のドミニカ戦では苦しんだものの、9回にともにヒットが飛び出したことがこの日の活躍に繋がる大きな要因となったことは間違いない。初戦とオーダーを変えずに臨んだ稲葉篤紀監督も、この2人の活躍には胸をなでおろしたことだろう。

 もう一つのプラス要因は日本の持ち味である機動力を使った野球を見せた点だ。ドミニカ戦では盗塁0だったものの、この日は山田が2盗塁、鈴木誠也(広島)と甲斐がそれぞれ1盗塁とチーム全体で4盗塁をマーク。メキシコの投手陣は明らかにクイックが遅く、どの盗塁も悠々セーフとなるものだったが、今後もクイックが苦手な投手を相手にした時には積極的に走ってチャンスを広げたいところだ。

 好調な打撃陣だが、逆に大きな気がかりとなるのが4番の鈴木の状態だ。第1打席、第2打席ともに走者を得点圏に置いたチャンスの場面で登場したが、いずれも外野フライに打ちとられて4番としての役割を果たすことはできなかった。これでドミニカ戦と合わせて2試合合計で8打数ノーヒットとなり、打点も0。スタメンで出場したメンバーでヒットが出ていないのは鈴木だけである。本人も大会前にバッティングの状態は良くないとコメントしていたが、その通りの結果となっている。一昨年のプレミア12での大活躍もあって対戦国からのマークが厳しいこともあるが、超短期決戦だけにまずは早く1本ヒットを記録したいところだ。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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