年頃の12歳の娘に完全無視される父親。悲しみをやわらげ、関係を改善することはできるのか。「論語パパ」こと中国文献学者の山口謠司先生が、「論語」から格言を選んで現代の親の悩みに答える本連載。今回の父親へのアドバイスはいかに。

※写真はイメージです(写真/Getty Images)
※写真はイメージです(写真/Getty Images)


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【相談者:12歳の娘を持つ40代の父親】
小6の娘を持つ40代の父親です。最愛の娘に嫌われてしまいました。思春期になれば「キモい」「ウザい」「クサい」などと呼ばれる覚悟はできていましたが、娘の場合は私を「完全無視」します。話しかけても、「つまらない生き物」をみるような目で私を見ます。関わろうとすればするほど嫌われていくようです(妻はそんな私を慰めてくれます)。「父娘の関係は幼少期の接し方が大事」と聞いていたので、小さい頃はよく公園で遊び、保育園の送迎や学校行事にも積極的に参加してきました。

 同い年の娘をもつ同僚は、お嬢さんと仲がよく、週末に2人でスキーや釣りに行くと聞き、「嘘をついているのでは?」と思ってしまいます。嫌われる理由として思い当たるのは、私が短気な性格なため、家でよく怒鳴っていたことです。もう娘と話すことはできないのでしょうか。

【論語パパが選んだ言葉は?】
・「子遊曰く、君に事(つか)うること数(しばしば)すれば、斯(こ)れ辱(は)ずかしめられる。朋友に数すれば、斯れ疏(うと)んぜらる」(里仁第四)

・「視ることは明(めい)を思い、聴くことは聡(そう)を思い、色は温を思い、貌(かたち)は恭(きょう)を思い、言(ことば)は忠を思い、事は敬を思い、疑わしきは問うを思い、忿(いか)りには難を思い、得るを見ては義を思う」(季氏第十六)

【現代語訳】
・「君主に仕えるのにしつこくすると、かえって軽んじ侮られることになる。友人と交わるのにあまりにしつこいと、かえって疎まれ嫌われる」

・「物事を見極めるためにはあらゆる面を見ること、耳に入る情報はその真偽に惑わされないこと、どんな人にも温厚であること、容貌は恭しくあること、言葉には誠実で、仕事は慎重、疑問はしかるべき人に質問すること、一時の怒りがその結果として生むであろう困難な事態を思念すること、利得に前にしては道義に適っているか吟味すること」

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山口謠司
山口謠司

山口謠司(やまぐち・ようじ)/文献学者・中国学者。大東文化大学教授。1963年、長崎県生まれ。同大学大学院、英ケンブリッジ大学東洋学部共同研究員などを経て、現職。NHK番組「チコちゃんに叱られる!」やラジオ番組での簡潔かつユーモラスな解説が人気を集める。2017年、著書『日本語を作った男 上田万年とその時代』で第29回和辻哲郎文化賞。『ステップアップ0歳音読』(さくら舎)『眠れなくなるほど面白い 図解論語』(日本文芸社)など著書多数。母親向けの論語講座も開催。フランス人の妻と、大学生の息子の3人家族

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