また、現地のコレクター達も同様だ。例えば、今回MLB公式チャリティーオークションに出品された大谷のサイン入りユニフォームが、13万210ドル(約1430万円)という驚くべき金額で落札されている。同時に出品されていた、今回のオールスターでMVPを獲得したウラジミール・ゲレーロJr.のユニフォームは8520ドルとなっており、大谷はその約15倍と桁違いの人気を誇っている。これに限らず、大谷のサイン入りであればトレーディングカードや試合実使用帽子、ボールなど、ありとあらゆるものが高額で落札されている。



 つまり、成績が良ければ大谷の価値は高まるが、不振になればもちろんその価値も下がるため、商業に関わる一部の人間が慌てふためいているだけなのかもしれない。なんとも現金な話である。

 だが、アメリカにも純粋に大谷に活躍し続けてほしいと願う者もいる。それはアメリカのスポーツ界関係者だ。大谷の代名詞である「ツーウェイ(二刀流)」という用語が、野球界以外にも広まってきていることはご存知だろうか。

 例えば、アメリカのスポーツで一番人気を誇るNFL(アメリカンフットボール)では、9月9日から始まるシーズンを前に、「NFLにおいて大谷のような二刀流選手は誰になるか」という話題で盛り上がっている。NFLの公式ニュース、『NFL.com』が7月16日に掲載した、「大谷のような可能性を持つ五人の選手」という記事では、「NFLにはいまだ真の二刀流はいないが、大谷の活躍によって、あらゆる競技で複数ポジションの選手が活躍できるかもしれないという可能性と影響を与えくれた」とも述べられている。

 また、現地メディア『ファイブ・サーティー・エイト』は、23日からの東京オリンピックで3大会ぶりに実施されるソフトボールの特集の一つとして、「リサ・フェルナンデス(元アメリカ代表選手)はソフトボール界の大谷翔平だ」という記事を出している。同選手は大谷同様、投打で優秀な成績を残しており、大谷の活躍によって同選手の価値が改めて評価されている。

 このように大谷が二刀流として活躍し、メディアが盛り上がれば盛り上がるほど、過去の選手が再評価され、そしてこれからの選手達の未来を切り開くことにもなる。だからこそ、アメリカのスポーツ界は、この「二刀流」の先駆者である大谷の成功を心から願っているのである。

 大谷の不振が長く続けば、アメリカの球界関係者やファン、さらに他のスポーツ界関係者が再び騒ぎ立てるかもしれない。だがそれは、それだけアメリカのスポーツ業界の大谷にかける期待が高いということに他ならない。アメリカでは今後も、大谷の一挙手一投足に注目が集まっていきそうだ。(在米ジャーナリスト・澤良憲/YOSHINORI SAWA)