空前のキャンプブームだが、肌の露出を極力少なくするなどの対策を忘れずに(gettyimages)
空前のキャンプブームだが、肌の露出を極力少なくするなどの対策を忘れずに(gettyimages)
人気アニメ「ゆるキャン△」シリーズが厚生労働省とコラボして、蚊・ダニの媒介による感染症対策を啓発するポスター。厚労省のホームページから誰でもダウンロードすることができる。夏のキャンプでは十分に注意しよう
人気アニメ「ゆるキャン△」シリーズが厚生労働省とコラボして、蚊・ダニの媒介による感染症対策を啓発するポスター。厚労省のホームページから誰でもダウンロードすることができる。夏のキャンプでは十分に注意しよう
人気アニメ「ゆるキャン△」シリーズと厚生労働省がコラボして啓発。厚労省ほHPから誰でもダウンロードできる
人気アニメ「ゆるキャン△」シリーズと厚生労働省がコラボして啓発。厚労省ほHPから誰でもダウンロードできる

 子どもたちも夏休みに入り、緑の多い公園で遊んだりキャンプに出掛けたりする家族も多いだろう。ただ、羽を伸ばす前に知っておいた方が良さそうなニュースがある。マダニを媒介とする致死率がとても高い感染症が、今年に入って、いままで感染者が出ていなかった地域で確認されたことが報じられており、「ウイルスを持ったマダニが生息域を広げ、感染地域が拡大している可能性がある」と専門家らが懸念を強めているのだ。

【「ゆるキャン△」と厚労省がコラボして対策を訴えるポスターはこちら】

 その感染症とは、「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」と呼ばれるもの。SFTSウイルスを保有したマダニに咬まれることによって感染する。2011年に中国で初めて確認され、日本でも13年に感染者が確認された比較的新しい感染症だ。それだけに一般人はおろか、医療機関にもまだまだ認知されていない。

■犬猫にも感染の可能性

 潜伏期は6~14日。発熱、倦怠感、頭痛や消化器症状が多いとされるが、重症化するケースも少なくない。

 有効なワクチンなどの治療薬はなく、国立感染症研究所によると、13年以降、これまでに596人の感染報告(今年4月28日時点)があり、うち76人が死亡している。ただ、報告後に死亡した数字は含まれておらず、実際の死者数はもっと多い可能性がある。致死率は10~30パーセントと言われており、非常に怖い感染症である。

 ちなみに人間だけではなく、犬やなどの動物も感染する。厚生労働省のホームページによると「ネコでは発熱・元気消失・嘔吐・黄疸などの症状を示し、重症化して約6割が死亡」と、人間を上回る非常に高い致死率を示している。また、野良猫に咬まれた女性がSFTSを発症した例もあり、体液などを通じて、動物から人への感染も起こり得るので、ペットにも注意が必要だ。

 これまでは宮崎県や鹿児島県、広島県、山口県など、西日本を中心に感染が報告されてきた。だが、今年に入り、静岡県、旅行先で感染したと思われるケースを除くと、関東では初となる千葉県(2017年の検体の再調査でSFTSと判明)、愛知県と、これまでに感染がなかった県でも続々と初の感染者が確認されている。全国の感染者数も16年までの3年間は年間で60人前後だったが、その後、増加傾向にあり19年には初めて100人を超えた。

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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