とはいえ、大谷がMVPを獲得する可能性が全くないというわけではない。打率の問題で打者三冠は難しいかもしれないが、先述の通り、大谷は現在も本塁打ではトップ、打点では両リーグ2位という好位置につけている。つまり、逆にいえば大谷が打者タイトル二冠を獲得する可能性もある。しかも、大谷は二刀流として投手も担っており、選手としての能力をみればゲレーロJr.にはないものを持っている。そして、この能力は現地でも十分に考慮されている。

 6月30日にエンゼルスの地元紙『ロサンゼルス・タイムズ』も「大谷がMVP予想で好かれる5つの理由」という記事を掲載し、大谷のMVP獲得のカギとなる5つの能力を次のように紹介している。

 まずは大谷の打撃角度だ。大谷は「バレルゾーン」と呼ばれる「打者が打球を長打、またはホームランにできる確率がもっとも高い速度と角度」の中でボールを捉える能力が非常に高い。この能力はリーグでもトップクラスで、引き続きホームランや長打を打つことができれば、MVP選考でも優位に立てると主張されている。

 さらに、ボールを見極める力の向上もプラスになっている。今季は、昨季以前に苦手としていた外角のコースに手を出すことが極端に減り、その結果、出塁率が.364(6月30日時点)に向上したと指摘する。出塁率が上がっていけば、ゲレーロJr.の成績を上回ることも可能で、もちろんこれもMVPの選考に良い影響を与える。

 もちろん、投手としての活躍も見逃せないと同記事は主張する。まずは制球力の向上だ。投手として本格的な活躍を見せている大谷だが、今季は制球力も安定していると指摘されている。6月30日のヤンキース戦では投球が乱れることもあったが、全体的に見ればフォーシームのコントロールは抜群で、ストライク率も最初の3試合では23%であったのに対し、それ以降は27%に上昇していると述べられている。

 さらに武器の多さも魅力だという。大谷はその速球以外にも、多くの変化球を多用している。例えば、伝家の宝刀スプリットでは被打率. 086という記録を残しているし、他にスライダーやカーブ、さらに今季から新たに加わったカットボールという武器もある。これらを最大限活用しており、大谷は投手としても非常に優秀であると同記事は断言している。

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