全勝優勝を決め、インタビューに答える白鵬
全勝優勝を決め、インタビューに答える白鵬

 本来なら「感動の復活劇」として大きく取り上げられるべきなのだが、祝福ムードには程遠かった。7月の名古屋場所で全勝優勝を飾った横綱・白鵬だ。

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 千秋楽で大関・照ノ富士との全勝決戦を制して、昨年春場所以来45度目の優勝。全勝優勝は自身の歴代最多記録を更新する16度目で、6場所連続休場明けでの優勝は横綱大鵬の5場所を抜いて最長のブランクだった。一人横綱の優勝は戦後最多の19度目と新記録を次々と打ち立てた。

 進退を懸けて臨んだ場所は満身創痍だった。手術した右ひざの状態は万全でなく、今場所は左足で踏ん張って右足から踏み込んでいた。全盛期のような力強さはない。36歳という年齢もあって不安視する声は多かったが、相撲巧者ぶりを発揮して白星を重ねていく。

 なりふり構わず勝ちにこだわった。14日の大関・正代戦は仕切り線から目いっぱい遠ざかり、両足が俵にかかりそうな位置で腰を落として場内がどよめいた。奇襲が功を奏して浴びせ倒しで勝つと、千秋楽の照ノ富士戦は、まるで「格闘技」のようだった。時間いっぱいになったが、白鵬が照ノ富士と立ったままにらみ合い。その後も蹲踞の姿勢を取ったが手をなかなかつかず、約50秒間にらみ合った。立ち合いで白鵬が左手を出して立つと、右から強烈なかちあげ。離れてからは張り手を繰り出し、四つに組みあった後は小手投げで、勝負を決めた。照ノ富士が前に倒れると、白鵬は右こぶしを突き上げるガッツポーズと共に雄叫びを上げた。

 スポーツ紙の相撲担当は白鵬の15日間についてこう振り返る。

「14日の奇襲に出た正代戦、15日の照ノ富士戦が象徴的でしたが、プライドをかなぐり捨てて勝つことに執着した。相手を受けて立つ『横綱相撲』には程遠いが、それだけ白鵬も追い込まれていたという事でしょう。おそらく本人も相撲人生がそう長くはないと感じている。相撲内容は決して褒められたものではないですが、勝利への執念は感じました」

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