一橋大端艇部には高校時代からのボート経験者はほとんどいないため、1年は初心者ばかり。荒川選手は身長185センチメートルのがっしりした体型を生かし、部内ですぐに頭角を現した。入部して4カ月後の8月、1年ながらレースに出場している。2年、3年に進むと、荒川選手は突出したパフォーマンスを見せるようになり、日本を代表する選手にまで成長した。一橋大は強豪チームであり、そのなかの中心選手として注目されるようになった。

 2016年5月、荒川選手はオリンピック・リオデジャネイロ大会の出場枠を懸けた世界最終予選のレースにのぞんでいる。男子軽量舵手なしフォアで、2位以内に入れば代表になれる。しかし結果は5位に終わり、出場はかなわなかった。一橋大4年のときである。

「リオ五輪は、最初は『出られたらいいな』ぐらいの気持ちで自然体だったのですが、負けて出られなくなり、すごく悔しく、苦しい思いをしました。心の整理がなかなかつかず、オリンピック中継は見ませんでした。このことをきっかけに自分を見直すようになりました。このときオリンピックに出られなかったことが、今の僕の原動力にもなっており、2020年東京大会に出ることを目標に練習を積みました」

 荒川選手を育てた一橋大端艇部主将の服部誠大さん(法学部4年)は次のように応援メッセージを送ってくれた。

「荒川先輩、オリンピック出場おめでとうございます。最後までベストを尽くして、勝利を勝ち取って下さい。部員一同、荒川先輩なら「できる!」と信じて応援しています」

 2017年、荒川選手は一橋大を卒業。NTT東日本に入社し同社漕艇部で活躍している。NTT東日本は全日本選手権大会(エイト、荒川選手もメンバー)5連覇中で、社会人最強チームといっていい。これまでオリンピックや世界大会に日本代表を何人も送り出してきた。荒川選手にとっては最高の環境である。

 中学高校時代のバスケットボール、大学に入ってからのボートによって下半身が鍛えあげられ、その強靱なバネによって艇を加速させるパワー、スピードで他選手を圧倒する。今年3月の日本代表候補選考レース(男子シングルスカル)では、2位に5秒以上も差をつけた。国内に敵はない。

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