不登校の「受け皿」として有名なフリースクールも全国で500か所程度しかありません。文科省の調査では、岩手県や高知県には、フリースクールが県内に1団体しかありません(2015年段階)。県内に1つだけとなると「家から遠いため現実的には通えない」という家庭もあります。また公的なフリースクールとも言える「教育支援センター」は、主な対象が中学生のため、小学生の不登校の受け入れを断るケースもあります。

 受け皿が少なければ自然と家にいる子も増えます。しかし、「わが子がどこへも行けない」という状況に親が焦ってしまい、子どもを追い詰めてしまうことも、よく聞く話です。そして周囲から追い詰められれば、小学生の子もひきこもって苦しみます。小学校4年生の際に「ひきこもっていた」という14歳の女性から当時の気持ちを聞いたことがあります。

「学校へ行けないときは、まったく動けませんでした。カーテンを閉めたまま、昼も夜も寝っぱなし。布団のうえだけですごしている時期もありました。その前から学校へ行くと体調が悪くなる、夜中には咳が止まらないという状況だったんですが、運動会を機に本格的に動けなくなりました。それが小学校4年生の10月ごろです。(中略)当時、思っていたのは『学校に行かなきゃ』という類の悩みではありません。自分が生きていていいのかがわからない、もう誰かに殺してほしい、と。そう思っていたんです。そういう衝動に駆られているなかで『今日はこのテレビがあるから生きていよう』とか、一日一日、生きる意味を見つけていました」(14歳・女性)。

 小4当時の彼女は、とても危険な領域にいたなと感じました。話してくれた内容が、自殺未遂をくり返して病院に搬送された人の話しと近かったからです。このように彼女が追い詰められたのは、学校での人間関係に疲れたこと、高圧的な先生や学校に耐えられなかったことなどが理由だったようです。

 人間関係に苦しむことも、高圧的な学校で苦しむことも残念ながら避けられないことかもしれません。しかし、これほど追い詰められる前に、早めに学校から離れられるのが正解だと私は思っています。学校は命がけで通うところではありません。早めに学校から離れるためには、不登校への理解や対策が必要です。一例をあげれば、学校へ通っているときから、学校が合わなかった場合の具体的な選択肢を親が調べていたり、いじめで苦しんだ場合の対応を親子で話し合えていたりすることは有効でしょう。

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心配すべきは不登校の子どもの「将来」ではなく…