写真はイメージです(Getty Images)
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「令和元年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」を元に筆者が作成
「令和元年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」を元に筆者が作成

 1年以上に及ぶコロナ禍で「不登校が増えた」と言われています。正確な結果は、今秋の文科省調査を待つしかありませんが、不登校新聞編集長の石井志昂さんは、フリースクールや相談機関の職員から「不登校の相談件数が多い」という話を聞くそうです。実はコロナ禍の前から、小学生の不登校は近年急増していました。石井さんが、その背景を説明します。

【ひと目でわかる】少子化なのに小学生の不登校は急増

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 コロナ禍の不登校について私が直接、取材したケースでは下記のような声が聞かれました。

「昨年の休校明け以降、なかよしだった2人から急に嫌な行動をされ始めたんです。無視や陰口などがくり返されて、内容もだんだんひどくなりました」(中1女性)

「休校明けから遅刻が多くなり、7月からは登校しようとすると『おなかが痛い』と動けなくなりました」(小3の娘の母親)

 あまりにも長いコロナ禍による閉塞感や無力感は、大人同様に子どもも感じており、その影響は、不登校というかたちでも出ているようなのです。

 こうした状況のなかで私が心配しているのが「小学生の不登校」です。あまり報道されていませんが、小学生の不登校は過去5年間で倍増しています。文科省調査(※)によれば、2014年度の小学生の不登校児童数は2万5864人。5年後の2019年度には5万3350人に倍増し、過去最多を更新しました。過去の推移を詳しく見ると、子どもの数は減る一方で、不登校の数は右肩上がり。変化が起きているのがよくわかります。

 急増の背景のひとつには「いじめの低年齢化」が指摘されています。文科省の調査によれば、いじめが最も多い学年は「小学校2年生」です。さらに言えば、小1から小3までが学年別のトップ3を占めており、統計上、いじめの低年齢化は顕著です。取材した子どもからも、小学校の低学年から集団での仲間外れや陰口が「苦痛だった」という話を聞きました。

 一方、小学校の不登校で切実な課題といえば「受け皿の少なさ」です。ひとり親家庭の場合などは、子どものめんどうを見る人も少なく、「不登校によって途方に暮れた」「どうすることもできずに悩んだ」という話を保護者から聞いてきました。

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石井志昂

石井志昂

石井志昂(いしい・しこう)/1982年、東京都町田市出身。中学校受験を機に学校生活があわなくなり、教員や校則、いじめなどを理由に中学2年生から不登校。同年、フリースクール「東京シューレ」へ入会。19歳からNPO法人全国不登校新聞社が発行する『不登校新聞』のスタッフとなり、2006年から編集長。これまで、不登校の子どもや若者、識者など400人以上に取材してきた

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