京都府警本部(C)朝日新聞社
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亡くなった人気陶芸家の古川剛さん(SNSより)
亡くなった人気陶芸家の古川剛さん(SNSより)

 男女の関係のもつれでボーガン(洋弓銃)を使った凄惨な事件がまたも起こった。

【写真】事件で亡くなった人気陶芸家の古川剛さん

 京都市伏見区のラブホテルの一室で、頭などにボーガンの矢が複数刺さっている状態で死亡している男性の遺体が発見されたのは7月9日――。

 被害者は京都市東山区の陶芸家、古川剛さん(37)だった。

 一緒に部屋にいた佐藤千晴容疑者(31)がホテルのフロントに「男性を包丁で刺した」と話したことから、京都府警は殺人容疑で逮捕した。

「現場の状況から、佐藤容疑者が古川さんの背中から刃物で襲い掛かり、ボーガンでとどめを刺したようだ。死因は失血死とみられる」(捜査関係者)

 清水焼で有名な京都。古川さんは将来を嘱望される人気陶芸家だったという。京都市のホームページによれば、古川さんの作品は2020年12月、京都の伝統産業に携わる若手人材を発掘して支援する「京ものユースコンペティション」のグランプリ受賞作に選出されていた。その作品は清水焼、京焼の技法を駆使して作成した虹彩霧滴流描組皿鉢(こうさいむてきながしがきくみざらばち)。

 授賞式の写真には表彰状を手に、誇らしげな古川さんの姿がある。自身の作品を展示した個展を何度も開催していたこともSNSで記されていた。古川さんを知る陶芸家はこう話す。

「37歳と若いが、実力派の陶芸家でした。家業が清水焼の陶器を製造する会社で専門学校などを経て、腕を磨いたそうです。彼の生み出す、天目釉と呼ばれる独創的な技法は、日本だけではなく、海外でもファンを獲得していた。イケメンで女性に人気もあり、今後、大きな期待をされている陶芸家の一人でしたから、ニュースで悲報を知り、驚きました」

 一方、佐藤容疑者は京都府内の大学で陶芸を学び、陶器の製造会社で働いた後、古川さんのもとに弟子入りしたという。佐藤容疑者が自身のSNSに15年ごろ、投稿した写真によると、小皿、マグカップにかわいい花模様を描いた陶器、鳥のブローチなど、癒し系の作品が多い。

 だが、20年の投稿では、古川さんの影響を受けたのか、作風が似たものがアップされている。

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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佐藤容疑者がボーガンを練習した動機