※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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「あのオムライスを作りたい」。医学部生時代に、卵がトロトロのオムライスを食べて感動し、レストランで修業して調理師免許を取得。そんな変わった経歴を持つ近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授の大塚篤司医師は、「研究は料理と似ている」と言います。なぜ、調理師免許を取るまでのめりこんだのか? 自身の過去を語ります。

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 医学研究者が行う研究には2種類あります。ウェットとドライと呼ばれるものです。ウェットとは、細胞を使ったりネズミなどの動物実験を行う、一般の人に広く知られた研究を指します。一方、ドライは患者さんの医療情報や遺伝子などのビッグデータを扱うものです。想像してもらうとわかると思いますが、細胞や動物を使う実験は必ず水を使います。なのでウェット。ビッグデータを扱う研究は基本的にパソコンと向き合う仕事なので水を使うことはありません。なのでドライと呼ばれます。

 私はウェットな研究をメインに行っているので、ドライな研究となると話は変わるかもしれません。そういうバックグラウンドをもった私の勝手な意見ということを十分にご理解いただいたうえで言います。

 研究は料理と似ています。

 これは私のささやかな自慢なのですが、実は、医学部の学生時代に調理師免許を取得しています。

 信州大学卒業の私は長野県松本市ではじめて一人暮らしをはじめました。実家は決して裕福ではなく、親が医者というわけでもなかったため、貧乏学生の私は生活費を浮かせるために自炊をしていました。

 医学部2年生のある日、スキー部の先輩に連れて行ってもらったレストランで、生まれてはじめて卵がトロトロのオムライスをいただきました。チキンライスの上でプルプルっと震えるオムレツ。中央にナイフを入れた瞬間、ゆっくりとあふれだす卵にとても感動したのを覚えています。

 あのオムライスを作りたい。

 学生時代の私は自宅に帰るやいなや、さっそくオムライスの研究にとりかかりました。

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大塚篤司

大塚篤司

大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員、2017年京都大学医学部特定准教授を経て2021年より近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授。皮膚科専門医。アレルギー専門医。がん治療認定医。がん・アレルギーのわかりやすい解説をモットーとし、コラムニストとして医師・患者間の橋渡し活動を行っている。Twitterは@otsukaman

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