最新の数字ではないものの、韓国の文化体育観光部の調査を元に、松谷氏が独自でまとめたデータによると、2018年韓国の音楽産業の輸出額1位は日本。割合は全体の3分の2と大きなウェイトを占めている。韓国エンタメ界のマーケティング戦略がうまいのは、グローバル展開と同時に、手堅い日本市場にも照準を合わせているところだ。

「K-POP業界がローカルマーケットとして日本を重要視していることは間違いありません。日本の音楽市場の特徴として、未だにCD+DVDが売り上げの70%を占めていることから、物が売れるという特徴が挙げられます。日本には“推し”にお金を使う文化が根付いているので、多少高額でも写真集を買う人が多いのにはそういった文化が影響していることもあるでしょう」

 さらに、日本でファン層が厚い要因として、松谷氏は10代20代の親にあたる世代にもK-POPは馴染み深いものであることを指摘する。

「日本に本格的にK-POPが流入したのは2005年の東方神起からで、今から15年ほど前。かつて夢中になっていた若いファンが今や親世代となっています。そういった長年培われた土壌があり、そこにBTSはうまく参入しています」

 そう考えると、今の日本でのBTSの人気は偶然ではなく、独自の文化に着目したローカルマーケティングの成功として必然だったと言えるだろう。(取材・文/AERAdot.編集部 大谷奈央)