こうしたサービスの台頭について、就活市場に詳しい千葉商科大学准教授の常見陽平氏は、次のように所感を語る。

「とうとう裏アカまで特定される時代が来たかというのが、率直な感想です。ただ、求職者、内定者のSNSチェックは今に始まったことではなく、実は歴史は長い。2005年前後のミクシィ、GREEなど、初期のSNSが登場した頃からすでにありましたし、みんなの就職活動日記や2ちゃんねるの就職板をチェックして、ニックネームや発言内容から人物を特定する動きもありました」

 常見氏によれば、ツイッター、フェイスブックが就活生に広がり、「ソー活」が流行語になった2010年前後には、これらをチェックする動きがより顕在化した。

「そしてこの数年で、テクノロジーを通じて採用のミスマッチやトラブルを避けようという流れが加速しています。今回のSNS特定サービスも、内定辞退率を割り出して話題となっていたリクナビのサービスと通ずるものがあるように思います」

 水面下でのSNSチェックが加速しているが、こうした取り組みを求職者に向けて公言する企業はほとんど見られない。

「(公言しているのは)一部のITベンチャーくらいですね。公言すれば、嫌なイメージを持つ就活生も少なくないからでしょう。とはいえ、企業は採用にSNSチェックを活用するのであれば、なぜチェックするのかを、就活生にきちんと説明する必要があるのではないでしょうか。複数人での共同アカウントや人違いの可能性もありますし、誤解した情報をもとに、採用の判断に影響するリスクもゼロではありません」(常見氏)

 常見氏は、オンライン面接ではくみ取れない部分がある点について理解を示しつつも、「補う情報をSNSでの言動だけに求めるべきではない」と指摘する。

「裏アカといっても、裏の人格とは限らないですし、その人の全人格ではありません。今の若い世代は、ネット社会においてはコミュニティーによって演じ分ける傾向があると言われています。一部を切り取ってジャッジをするのではなく、総合的に判断していくことが重要であると感じます」 

 企業側に対する課題を指摘する一方、就活生に向けては次のように警鐘を鳴らす。

「就活生を窮屈にさせるのはかわいそうだという意見はありますが、ネット社会では、常に『見られている』ことを意識して生きるというのは教訓かと思います。公人でなくても、ちょっとした言動が不特定多数の人に見られている。SNSを知らない人に見られているという気持ち悪さは、就活に限った話ではないはずです」

(文=AERA dot.編集部・飯塚大和)