その西村氏の姿は10日、地元・兵庫県神戸市にあった。兵庫県知事選挙で自民党が支援する候補者の応援に駆けつけ、「私の発言でご迷惑をおかけしている。コロナを抑えたい思いだった」などと圧力発言について釈明した。西村氏をよく知る地元の関係者はこう話す。

「地元では傲慢で知られる西村氏が、知事選挙の応援に来るなんて信じられんわ。衆院解散総選挙が近く、自分の選挙のためでしょう。今日の演説も圧力発言の言いワケが多かった。知事選挙を利用しているようにも聞こえる。西村氏が兵庫県のためになったことはほとんどない。それどころか、兵庫9区の選挙区で衆院選に出そうな人物をつぶすことに腐心しているとよく言われる」

 世論調査では最近、将来の首相候補として名前が取りざたされるようになった西村氏にとって、圧力発言は大きなマイナスとなった。西村氏は騒動で自民党本部の二階俊博幹事長を訪ね、謝罪するはめにもなった。西村氏と東京大学で同級生だった元官僚はこう話す。

「昔から彼の口癖は『将来は首相になる』です。世論調査で将来の首相候補に名前が出るようになり、順位や数字が出る。普通、彼くらい偉くなれば、政権の支持率が気にするのですが、『オレの順位がアップした』とそっちの数字ばかりを自慢する。金融機関を通じて圧力という発言も、権力を使って首相への階段を駆け上がろうとする手柄への焦りもあったのではないか。二階幹事長に謝るなんて、プライドの高い西村氏にとってはさぞ、屈辱でしょう」

 西村氏の「圧力発言」はワクチン不足、緊急事態宣言の再発出、東京都議会選挙での「惨敗」で低迷する菅政権にとって、さらなる打撃となった。SNSでは「#西村康稔の更迭を要求します」がトレンド入りするほど炎上が続く。

「頭が高いことで知られる西村氏がよく発言の取り消し、幹事長に謝ったなとびっくりだ。ただ、一大臣であそこまで踏み込んだ発言はできないはず。菅首相はじめ、官邸では金融機関を使って飲食店に圧力をかけるという準備をしていたはず。その点では西村氏はちょっと気の毒ですね。菅首相はとりあえず、西村氏に責任を押し付けて乗り切るつもりなのでしょう」(自民党幹部)

 解散総選挙になれば、ボディーブローのように西村氏や自民党に効いてくるのではないか。

(AERAdot.編集部 今西憲之)