経営組織や組織行動など、実務に生かせる授業も多かったという。

「数字に苦手意識を持っていたのですが、授業を受けてから数字が持つ意味、重みを理解することができました。まだまだ勉強中ですが、なぜ経営陣が数字に基づいて話をするのか、だんだんとわかるようになりました」(同)

 業務に支障をきたさないよう、仕事は先取りした。

「4月に新卒研修があるので1~3月は忙しいのですが、2月は期末レポートの時期とも重なります。そのため秋口から前倒しで仕事を進めました」(同)
 
 どんなに忙しくても、朝と就寝前のヨガは「リフレッシュするために必要」と、意識して取り組んでいる。大友さんは大学院での学びについて、次のように話す。

「最先端の研究について聞くのが刺激になります。いろいろなバックグラウンドを持ったクラスメイトとのディスカッションが、財産になっています」

 歯科医の堀口尚史さん(47歳)は、IT専門職大学院、京都情報大学院大学の2年生。勤務先の事務作業を効率化したいと思ったのが、入学のきっかけだった。

 「ITを導入して歯科衛生士や事務員の業務を軽減したいと思っても依頼先がわからない。コストもかかるので、自分で勉強しようと思いました」(堀口さん)

 京都情報大学院大学は、修業年限を延長できる長期履修制度を導入している。2年分の学費で最長4年まで延長でき、堀口さんはこの制度を利用して3年間修業する予定だ。

 現在、週に3日授業を受けている。授業は半日で終わるが、その後も課題や自主的な学習で、ほぼ丸一日費やされるという。勤務する歯科医院の業務報告書をIT化するなど、学びを実践。学会での発表も体験した。現在は、歯科治療や歯科医院への疑問などを紹介するウェブサイトを制作中という。

 堀口さんは仕事のほかに、『馬』をライフワークにしている。馬の近くにいたいと、歯科医の研修先に北海道を選んだほどの筋金入りの馬好きだ。3年次は人工知能(AI)を学び、馬の動きをAIで分析し、体調管理できるソフトを開発するのが目標だ。大学院で学ぶことで、課題も見えてきたという。

 「ITはすごい勢いで進化しており、人によってスキルに差が開いている。日本は専門家と一般社会を結ぶ人材が足りず、ITを生かし切れていない。もっと専門家とジョイントできる人材が増えれば、ITを社会に活用できるようになると思います」(同)

(文・柿崎明子)

アエラムック『大学院・通信制大学2022』より