2回戦の柴島戦で59対0とラグビー並みのスコアを記録するなど、初戦から5試合連続二桁得点の大阪桐蔭は、準々決勝で上宮に9対3、準決勝も桜宮に7対0と大勝し、順当に決勝進出。中村も7試合で21打数14安打18打点6本塁打と打ちまくった。

 だが、決勝の上宮太子戦では、初回に3つのエラーなどで5点を失い、大苦戦。9回にようやく同点に追いついたが、延長11回に決勝点を許し、5対6で敗れた。

 高校最後の打席となった10回2死一、二塁で敬遠され、3打数無安打2三振と不発に終わった中村は「自分が打たなくては、と力んでしまった」と悔やみに悔やんだ。

 その後、大阪桐蔭は08年、12年、14年、18年と、2度の春夏連覇も含め、4度(通算5度)夏の甲子園を制し、黄金時代を築き上げたが、近年は履正社も19年夏に全国制覇するなど躍進。当分の間、“大阪2強”のうち、夏の甲子園を逃したほうのチームが“幻の最強校”と呼ばれることになりそうだ。(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍プロ野球B級ニュース事件簿2019」(野球文明叢書)。

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久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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