大会直前に無観客開催に舵を切ったわけだが、鈴木氏は1年前から「無観客」が望ましいと主張してきた。

「政府は最初からフルに客を入れて開催しようとし、それがコロナ禍でやむを得ず80%、50%……と減らしていった。それが国民に非常に違和感を与えたんですよ」

 鈴木氏によれば、政府のこの“減点方式”が間違いで、最初から「無観客」とし、感染状況に応じて客を増やしていく、“加算方式”にしていれば、これほどまでに国民から批判を浴びることはなかっただろうと言う。

 鈴木氏によると実は、IOCは日本ほど、観客を入れることへはこだわっていないのだという。IOCが求めるポイントと日本側のポイントでは、当初からズレがあったと鈴木氏はみている。

「IOCは、感染予防とか観客の問題というのは日本側に投げているんですね。本音としては『観客のアリ、ナシはどうでもいい』のです。一番大事に思っているのは、放送権料と五輪という事業の持続性なのです。テレビ放送ができるならば、コロナ禍であろうが、緊急事態宣言中であろうが、どんな形であってもオリンピックをやってほしいわけですよ」

 米ワシントン・ポストでは、バッハ会長は“ぼったくり男爵” と揶揄された。

「それはロサンジェルス大会(1984年)から、IOCは五輪での放映権料やスポンサー料をつり上げて、商業化したからです。あのころにうまみを知り、味をしめたIOCがいまだに同じカラクリでやっている。だから“ぼったくり男爵”と言われる」

 IOCの財源を支える組織として、IOCの外郭機関「オリンピック放送機構」がある。

「放送機構を通じて、世界中の放送局が契約している。それがIOCの一番大きな財源ですから。無観客でいいわけです。五輪が開催されて放送権料が入れば」

 東京五輪も、こうしたIOCの都合でまわっていく。放送権料が一番重要ならば、会場に観客の有無よりも、大事なのはより多くの人が視聴できる時間帯に競技があること。鈴木氏は欧米で人気の競技のスケジュールに着目する。

「アメリカやヨーロッパのゴールデンタイムに合わせた競技時間になっているんですね」

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