打てる捕手が野球界のトレンドとなってきている今、捕手でも打撃で求められるものは段々と多くなってきている。リーグ全体の打撃力も相対的に上がっている中、3割で良いでは話にならない。タイトル争いをするくらいの成績が期待される。なぜなら、捕手が打席に立った際に厳しく攻められることも随分と減ったからだ。

「厳しい球や死球などを当てられることも減ったから、クリーンアップを任されるくらい打たないと。古田敦也さん(元ヤクルト)は凄かった。首位打者を獲った翌年に死球が増えた。それでも主力として攻守で結果を残し続けた。現役では会沢の死球数はずば抜けて多い中、結果を出しているのは凄いこと」

「これからは攻守両立の捕手は難しい。打てれば試合に出れるし打撃タイトル獲得も夢ではない。野村克也さん(元南海ほか)のように捕手の三冠王が出るかもしれない。阿部慎之助(現巨人二軍監督)が今の時代にプレーしたら可能性も大きかった。本当に死球が多かったからね(阿部の死球152は歴代4位。1位は清原和博の196)」

 古田は91年の首位打者(打率.340)を獲得した年に4死球だったのが、翌92年にリーグ最多の11死球と激増。阿部も12年の二冠王獲得時(打率.340、104打点)は9死球だったものが翌13年にリーグ最多の15死球となった。ちなみに昨シーズンは大城が0、森が3、甲斐が3であり、野村が三冠王(打率.320、42本塁打、110打点)を獲得したシーズンは6死球だった。

「完全に2極化する可能性もある。打撃重視、守備重視と捕手を使い分ける専門職化というのかな。正捕手を固定せず割り切ってターンオーバーの形にする。それぞれの役割で求められるレベルも上がるから、逆に各チームで試合出場への争いが激しくなるかもしれない」

 時代の過渡期には賛否両論が出る。例えばメジャーリーグから入ってきた極端な守備シフトも、今ではNPBで当たり前の光景になった。捕手の役割も同様、大きな転換期に差し掛かっている。

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「捕手の二刀流みたいなものです」