でも、コロナ禍で多くの国民が大変な状況で求められるのは、威圧感ではなく、弱者に寄り添うソフトなパワーではないでしょうか。いじめ、不登校、フリーターから弁護士になった女性候補者が当選したように、政治家もエリートや強さを強調する時代ではなくなりました。都議選の結果にも、それはよく表れていたのではないでしょうか。

 自民党内では、都議選の“惨敗”をみて「菅さんでは次の衆院選を戦えない」という空気も出始めています。次期衆院選で、自公で過半数割れなどしたら、それこそ首相を辞めざるを得なくなる。菅首相は「勝てない」とわかったら、むしろ一歩引いて、自分は総裁選に出ずに誰かを担ぐ可能性もあると思います。その方が、菅首相は政治的に生き残れるような気がします。

 とはいえ、ポスト菅で有力な人材が見当たらない。河野太郎行革相は、政権の空気をガラッと変えるにはいいでしょうが、総裁選で菅首相と争う姿はイメージできません。

 安倍晋三前首相の再々登板への待望論もありますが、私は現実的ではないと思います。いろいろなスキャンダルが重なりすぎたうえに、ことごとく説明責任を果たせていない。もう首相はできないでしょう。本人も今が気楽で一番楽しいんじゃないでしょうか。

 その安倍氏も関連する形で、次の政権では二階俊博幹事長を外そうとする動きがくすぶっています。安倍氏と懇意の麻生太郎財務相、甘利明税制調査会会長の「3A」が中心となって二階幹事長を揺さぶっているわけですが、政局にたけた二階氏が黙っているはずがない。昵懇の仲である小池氏を担ぎ上げて国政復帰の道筋をつけて、自らの派閥に引っ張り込む可能性もゼロではない。

 私は小池氏の性格からして、国政に戻ることは考えていると思います。すぐに国政復帰とはならずとも、二階氏が小池氏というカードをちらつかせながら、「3A」に対抗して党内に揺さぶりをかけることは十分に考えられます。いずれにせよ、小池氏の動向には今後も注目が必要です。(構成=AERAdot.編集部・上田耕司)

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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