この2人に続くエース候補として期待されていたのが薮田と岡田の2人だが、2017年には薮田が15勝、岡田が12勝と揃って二桁勝利をマークしたものの、その後は低迷。今年も一軍の戦力になることができていない。高校卒の投手は高橋と山口だけでこの2人もなかなか殻を破れないシーズンが続いている。

 3位以下で入団した投手では中村祐太(2013年5位)、床田寛樹(2016年3位)、玉村昇悟(2019年6位)、大道温貴(2020年3位)などがおり、今年は玉村と大道の2人が健闘しているが、“エース候補”と呼ぶにはまだ物足りないと言わざるを得ないだろう。

 原因の一つとして考えられるのは、素材を重視したドラフト戦略である。上位で指名した投手の顔ぶれを見ても、1位として盤石な評価を得ていたのは野村、大瀬良、森下、栗林の4人。それ以外の選手はドラフト時点での評価を考えると少しずつ順位が高いと感じた選手ばかりである。広島は伝統的に豊富な練習量で選手を鍛えて一流にするという考えが強く、完成度は低くても馬力がある選手を高く評価する傾向がある。

 岡田、薮田、中村恭平、矢崎、山口、島内などはまさにその典型例であるが、プロ入り後もなかなか完成度が高まらずに苦しんでいる。評価の高い選手を狙って抽選で外しているケースももちろんあるが、森下、栗林と2年続けて完成度の高い投手が期待通りの活躍を見せていることを考えても、過度な素材買いはほどほどにしておく必要があると言えそうだ。

 もうひとつ気になるのが球団の環境面である。ここ数年、ボールの回転数や回転軸などを詳細に計測できる機器の発達で、これまで見えなかったデータの活用が一気に普及している印象が強いが、12球団の本拠地の中でそのような計測機器を設置していないのは広島だけといわれている。中には個人的にトレーナーなどに依頼して、そのような取り組みを行っている選手も当然いるとは思われるが、チームとして取り組んでいなければやはり全体のレベルが上がっていくことには繋がらない。

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広島は元々“先進的”な球団だったが…