環境を変えることで彼らが復調し、プレーオフへ向けて貴重な戦力になり得ると判断する球団があってもおかしくはない。逆にエンゼルスにとっては今季のプレーオフ進出を断念するなら、オフにFAで出て行かれるよりはシーズン中にトレードして見返りを得る方が理にかなっている。

 ちなみに野手はというと、長期契約のトラウトとレンドンを除けば、大谷も含めてフリーエージェントの権利を得るまで間がある、キャリアの浅い選手が多い。特にジャレド・ウォルシュ一塁手やデービッド・フレッチャー二塁手、タイラー・ウォード外野手などはチームの中核になり得る可能性を見せており、エンゼルスも現時点で手放したくはないだろう。

 なお高給取りながら故障がちで不良債権化しつつあるジャスティン・アップトン外野手は来季まで契約を残しているので、他球団が今季中に獲得に動く可能性は低い。ベテラン勢で放出があるとすれば、ワールドシリーズ制覇の経験があるカート・スズキ捕手の方だろうか。

 とはいえ、エンゼルスがプレーオフ進出を諦めるにはまだ早い。20日あたりでプレーオフ圏内に3ゲーム差くらいまで迫れば、逆転を狙って買い手に回る可能性もある。その場合に補強ポイントとなるのは、やはり投手陣だろう。

 今季のトレード期限での放出候補として注目されている投手としては、先発ではエンゼルスと同地区で最下位に沈むレンジャーズで6勝0敗、防御率1.98と奮闘している右腕カイル・ギブソン、ロッキーズで7勝を挙げている右腕ヘルマン・マルケス、ブレーブスで6勝の左腕ドルー・スマイリーあたり。リリーフでは、ブルワーズの守護神ジョシュ・ヘイダー(ここ最近はチームが好調で可能性は低いか)、パイレーツで11セーブを挙げているリチャード・ロドリゲス、オリオールズで中継ぎとして存在感を発揮している左腕タナー・スコットなどがいる。

 いずれにせよ、エンゼルスがトレード期限を前にどう動くかは、ここからの約3週間の勝敗が大きくものを言う。果たして大谷は今季もプレーオフに縁がない状況でシーズン後半を過ごすのか、それともプレーオフを目指してチームメイトと奮闘するのか。チーム状況次第でモチベーションや起用法に影響が出ることも考えられるだけに、エンゼルスと大谷にとっては月末にかけてひとつも落とせない試合が続きそうだ。(文・杉山貴宏)