同じく呼びかけ人であるジャーナリストの春名幹男さんは、昨年に延期を決定する時点から政治的に利用されていたと語る。

「昨年の3月24日、安倍晋三前総理が自分の政治的野心を絡めて、開催を1年後に延期すると一人で決めていた。元気で総理をやっていた場合の時の話ですが、2年の延期だと、自民党総裁の任期が切れてしまう。1年の延期だったら、日本の選手が活躍して、いい雰囲気になったところで解散し、自民党総裁の4期目を狙えるという思惑があったのでしょう。公式の議論なく、IOCのバッハ会長と電話会談をする直前に大会関係者を集め、その場で安倍前総理が1年延期を告げたと、森喜朗前組織委員会会長が発言しています。結果として、1年の延期では、専門家が警告するとように開催できる状況になっていない。これは、もはや政治に汚されたオリンピック。人生をかけて取り組んでいる選手には非常に気の毒だと思います」

 五輪中止を求めるオンライン署名には、弁護士の宇都宮健児さんが5月5日に先駆けて同じ署名サイト内で行っており、3日時点で43万以上の賛同者数を集めている。宇都宮さんは、5月14日に35万を超える署名と要望書を東京都に提出していたが、都は未だに要望書の扱いについて何ら答えを出していない。宇都宮さんはAERA dot.の取材にこう答えた。

「署名した約35万人の思いを反映した要望書を適当にあしらっているように受け止められます。国民が主権である社会のはずならば、国民の意見は尊重しなければならない。それに対する誠意や謙虚さが全く感じられない。上から目線の政治と行政が行われている官尊民卑といえると思います」

 上野さんは、オンライン上の活動を政治が無視できなくなってきているとも話す。

 コロナ前から顕在化しているウェブ上の署名活動やSNSのハッシュタグ運動などのオンラインアクティビズムは、参加のハードルが低い民主的なツール。上野さんはこう言う。

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宇都宮氏との共闘も