ところが、これで「お役御免」と思いきや、不思議なめぐり合わせで、さらなる出番が巡ってきた。

 二塁に到達した福田が負傷し、ベース上で仰向けに倒れていたのだ。本来なら浜口が臨時代走を務めるところだが、治療中で出場は無理。そこで、打順が2番目に遠い古場が、この回2度目の臨時代走に指名されたというしだい。

 だが、次打者・小川桜輔は空振り三振に倒れ、6対8でゲームセット。「もう1回生還できたら」の願いは叶わなかった。

 長崎県内の高校で唯一水産科のある同校は、部員18人のうち主力5人をハワイ沖での海洋実習で欠くハンデにもかかわらず、甲子園出場歴のある諫早を相手に5回まで3対3と互角に戦い、9回表に3点を追加された直後にも3点を返す大健闘。高校最後の打席で凡退したあとに、臨時代走で6点目のホームを踏み、見せ場をつくることができた古場も「今までで一番いい試合でした」と敗れて悔いなしの表情だった。(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍プロ野球B級ニュース事件簿2019」(野球文明叢書)。

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久保田龍雄

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久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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