理不尽に逆ギレしてる場合ではない。それほどまでに、羽子板と見まがうほどに、俺の顔の彫りは浅い。なんなら、ない。俺の顔には彫りが、ない。見てみるがいい。俺の顔を。ん?これは、羽子板か、よし、あとは羽根さえあれば羽根つきができる、ドンキに羽根売ってるかな、あ、マネージャー、悪いけどコレで羽根を買っいい加減にしろよ馬鹿野郎。何度このくだりをやらせるんだ。ウチのマネージャー、結構忙しいんだよ、何度も登場させては申し訳ないじゃないか。

 もう、今回のコラムで何が書きたかったのか忘れてしまうほどに羽子板とドンキが大活躍してるわけだが、要するに、俺、なんで役者やってるんだろと、たまに思うのである。

 能面のような顔に、短足。どうでもいいが今、マイガラケーで「たんそく」と打ったら変換予測の第一候補が「嘆息」だった。正しい。短足で嘆息。嘆息してしまうほどに短足。なんというか、ずんぐりむっくり。ズングリムックーリ。今なんとなく片仮名にしてみたが、というかアレか、身長は高い方なのでズングリムックーリではないか。いいや。なんか気に入ったのでこのまま使おうズングリムックーリ。そんなズングリムックーリな俺がなぜ俳優をやっているのだろうとたまにですが、鏡を見ながら思ってしまうのですよ。

 スタッフさん(性別問わず)でたまに、息を飲むような美形な顔立ちやシュッとしたスタイルの人がいると、「なぜに君が裏方で、僕が表に出るのよ」と思ってしまうのです。

 芝居のチェックのためモニターを見てたら、「なんだ、この冴えない普通にもほどがあるおじさんは。あ、俺か」となったことは1度や2度ならず、ちょうど3度ある。うそ。486度くらいある。

 まあ、だからこそ、俳優で生活できてることにより一層の感謝をしつつ、7月10日土曜日は「ひきこもり先生」いよいよ最終回ですと宣伝をブチ込みつつ、このズングリムックーリ俳優をこれからもどうかひとつ。

佐藤二朗(さとう・じろう)/1969年、愛知県生まれ。俳優、脚本家。ドラマ「勇者ヨシヒコ」シリーズの仏役や「幼獣マメシバ」シリーズで芝二郎役など個性的な役で人気を集める。ツイッターの投稿をまとめた著書『のれんをくぐると、佐藤二朗』(山下書店)のほか、96年に旗揚げした演劇ユニット「ちからわざ」では脚本・出演を手がける。原作・脚本・監督の映画「はるヲうるひと」(主演・山田孝之)が全国公開中

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佐藤二朗

佐藤二朗

佐藤二朗(さとう・じろう)/1969年、愛知県生まれ。俳優、脚本家、映画監督。ドラマ「勇者ヨシヒコ」シリーズの仏役や映画「幼獣マメシバ」シリーズの芝二郎役など個性的な役で人気を集める。著書にツイッターの投稿をまとめた『のれんをくぐると、佐藤二朗』(山下書店)などがある。96年に旗揚げした演劇ユニット「ちからわざ」では脚本・出演を手がけ、原作・脚本・監督の映画「はるヲうるひと」(主演・山田孝之)がBD&DVD発売中。また、主演映画「さがす」が公開中。

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