これまで日本維新の会は菅首相、安倍晋三前首相とは近い距離を保っていたが、対自民党という関係では一線を画していた。しかし、今回の兵庫県知事選では自民党と組んだ維新。だが、斎藤氏の陣営は自民と維新の間でかなりの「温度差」があるという。

 選挙前も斎藤氏の周りはいつも、自民党の地方議員が取り囲む。維新の地方議員らは遠ざけられている感がある。世論調査の数字では、斎藤氏がやや優勢で、金沢氏がそれを追うという展開だ。斎藤氏を支持する自民党の地方議員はこう話す。

「維新も一緒にやってくれるのはいい。だが、うちが選挙資金の多くを出しているので、主導するのが当然や。正直、勝手に応援しといてや、という感じかな。斎藤氏のシンボルカラーも維新のグリーンでなく、自民党のブルーや。斎藤氏が知事になっても、大阪都構想のような政策はさせない」

 一方で日本維新の会の国会議員はこう話す。

「維新の本拠地・大阪のすぐ隣、兵庫県ですから、自民党の地方議員とうまくやれと言っても難しい。先方はベテラン議員も多く、維新の若造になんかという思いでしょう。しかし、国会では兵庫県知事選の歓迎ムードや。菅首相の英断で、斎藤氏に自民党も乗った。今は都議選の真っ最中ですが、維新は1議席の確保もなかなか厳しい。大阪都構想否決のダメージも少なくない。そんな中で解散総選挙の結果次第では、自民党と維新との連携もありうることを松井市長、吉村知事も想定していると思います」

 菅首相は2日夕、都議選で「獲得議席0」の危機に立たされている維新のために大阪の吉村知事、松井市長をわざわざ官邸に呼ぶパフォーマンスを画策し、恩を売ろうと企てているという。兵庫県知事選挙は衆院選を見据えた菅・自民党と維新の連携の試金石になるかもしれない
(AERAdot.編集部 今西憲之)

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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