菅首相と吉村大阪府知事(C)朝日新聞社
菅首相と吉村大阪府知事(C)朝日新聞社

「菅義偉首相は地方でも維新の肩入れなんですかね。自民党の総裁なのに…」

【写真】大阪の医療崩壊による「命の選別」で命を落とした大物はこちら

 こう憮然とした表情で話すのは、自民党の兵庫県議。兵庫県知事選挙が7月1日に告示、18日に投開票となる。元大阪府財政課長の斎藤元彦氏(43)、元兵庫県副知事の金沢和夫氏(65)、元兵庫県議の金田峰生氏(55)、塾経営の服部修氏(47)、元兵庫県加西市長の中川暢三氏(65)の5人が立候補した。

 5期務めた井戸敏三知事の後継をめぐる争いとなる。自民党兵庫県連は当初、井戸氏のもとで副知事として手腕を振るった金沢氏への支援を決定した。しかし、一部の県議が日本維新の会が応援する斎藤氏を推すと表明し、ややこしくなった。

 斎藤氏は総務省から大阪府財政課長として出向中で、大阪府の吉村洋文知事、松井一郎前知事(現大阪市長)の右腕だ。出馬表明するとすぐ日本維新の会が支援を決めた。

 斎藤氏か、金沢氏か――。

 意見が割れた自民党だったが、最後に地元選出の自民党の国会議員が斎藤氏を推したことが決定打となった。

 しかし、自民党県議の半数以上が金沢氏の応援に入るという分裂選挙となった。維新と自民党のお墨付きを得た斎藤氏か、地元県連のサポートをバックにした金沢氏か。事実上の一騎打ちだ。

「知事選という大きな選挙で、維新が支援を表明した候補を常識的に自民党が推すわけがない。金沢氏の支持を地元県連が決めたのに、斎藤氏にひっくり返すには当然、二階俊博幹事長、菅首相の了承がないと無理です。菅首相は斎藤氏に乗ることで、解散総選挙後を見据え、維新カードを握ろうとする意味合いがある」(自民党幹部)

 10月が任期満了の衆議院は、いつ選挙があってもおかしくない。新型コロナウイルスの感染状況、まもなく開催される東京五輪・パラリンピックの行方いかんによっては、自民党も劣勢に立たされかねない。菅首相の自民党総裁任期は9月末となっている。

「菅首相の頭には東京五輪・パラリンピックの中止はない。観客を入れるか入れないか、そこだけ。とりわけ、五輪観戦に行ってコロナ感染者が増えるというのが最悪のシナリオ。それを避けるには無観客もやむなしという方向性だ。最終判断は当然、新型コロナウイルスとワクチン接種の進み具合で変わってくる。だが、コロナ感染が拡大しているのに、ワクチン不足が続き、国が自治体へリクエスト通りに供給できないとなれば、自民党に逆風は必至。ワクチン供給が滞っている今、選挙をやれば、自民党は100議席近く減らすという調査もあるそうだ」(官邸関係者)

著者プロフィールを見る
今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

今西憲之の記事一覧はこちら
次のページ
菅首相が吉村知事を官邸に呼ぶパフォーマンス