そして攻撃面では、二軍監督時代から掲げてきた機動力を生かした野球が上手くはまっている印象を受ける。盗塁数は2018年もリーグ2位の77個と少なくなかったが、矢野監督の就任した2019年にはリーグ断トツの100個を記録。昨年も巨人と同数(80個)だがリーグ1位の数字をマークしている。2019年に入団した近本光司が2年連続で盗塁王に輝き、今年もリーグトップを争っているのはもちろん大きいが、決してスピードが武器ではない大山悠輔やサンズも盗塁を記録しているように、チーム全体で走る意識が向上していることは間違いない。

 金本知憲前監督時代に獲得した選手が良いタイミングで開花しているというのもあるが、ルーキーながらオールスターにも選ばれた佐藤輝明、中野拓夢を筆頭に投手でも伊藤、馬場、及川雅貴、西純矢など若手を積極的に抜擢してチームの底上げにも成功している。もし終盤に逆転を許して優勝を逃すようなことがあったとしても、これまでの成果を考えると監督続投となる可能性は高いだろう。

 一方の与田監督も6年連続でBクラスに沈んでいたチームの再建を託され、1年目の2019年は5位だったものの、昨年は8年ぶりのAクラスとなる3位にチームを浮上させており、これまでの結果は決して悪いものではない。今シーズンもエースの大野雄大が不振に陥っているにもかかわらず、現時点でチーム防御率は阪神とリーグトップを争う数字をマークしており、投手陣に関しては立て直しが進んでいるように見える。先発では柳裕也小笠原慎之介、リリーフではR.マルティネス、福敬登といったところが監督就任後に主力となっている。

 しかし大きな課題となっているのが野手陣だ。現時点での得点、チーム打率、出塁率、長打率は軒並みリーグ最下位。広いバンテリンドームナゴヤを本拠地にしているということはあるものの、打力不足は明らかである。そして気になるのが新たな戦力の台頭が見られないという点だ。

次のページ
与田監督就任から向上の気配がない打線