私としては、「小池さんはなぜ、直接言ってこないんだろう」という思いはありました。汚れ仕事は全部副知事に任せるばかりで、その汚れ仕事の部分を文句も言わずに引き受けてきたのが、多羅尾さんなのです。

――小池都知事が作り上げてきた現体制について、OBとして懸念されることがあれば教えていただきたいです

 小池知事はこれまで、自分本位で物事を進めてきたように思います。都民のためにやっている風を装っていますが、自分の政治的な力や地位を高めるためにやっているにしか過ぎないというのが、あまりにも露骨に見えてしまう。付き合わされている職員も皆、それが分かっている。「都民のために」というよりも「小池さんのために」という状況が長く続いているので、モチベーションも下がります。

 それに、外からは見えませんが、小池さんが人事権を振りかざして恐怖政治をしてきたことによって、都庁が委縮してしまっている。自分の意見を言ってより良い状況に持っていくことを諦めてしまっていて、下を向いて生き延びるしかないといった雰囲気すら見える。その諦めが蔓延しているので、昨年辞めたOBとしては、「都庁大丈夫か?」と心配になってしまうんですよね。

 それが、小池さんが残したものの一つなのだと思います。今こうして、忖度の得意な多羅尾さんが出世頭として立っていることが、そうした物言えぬ雰囲気を象徴しているのではないでしょうか。
(構成=AERA dot.編集部・飯塚大和)

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