芸人のウド鈴木さん(写真=事務所提供)
芸人のウド鈴木さん(写真=事務所提供)

 内村は仕事をする上で、「否定」「批判」「非難」といった行動を取らない。他人の落ち度を責めないし、怒らない。

【写真】「理想の上司ランキング」女性部門の1位はこの人

 理想の上司ランキング、男性部門で5年連続1位のウッチャンこと内村光良の“上司力”に迫った書籍『チームが自ずと動き出す 内村光良リーダー論』(朝日新聞出版)。関係者への取材を重ねた著者の畑中翔太が、リーダー内村を分析する本連載。

 第14回目のテーマは「誰も傷つけない」。

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 内村はどんな仕事場であっても、他人のミスに対して声を荒らげることは絶対にしない。またその相手を追い詰めるようなことは一切しない。
 
 ミスすら否定しない弱いリーダーが、統率など取れるものか? ミスがミスを生む、ゆるい職場になってしまうのではないか。そう思いたくもなるが、事実、内村の現場では、そうしたケアレスミスが連発することは少ないというから驚く。

「おそらくミスをしてしまったスタッフが、『二度とこんなことはないように』と気を引き締めるからではないでしょうか。叱られなかったけれど、次はやらないようにしようと、周りの人が自主的に直していくんですよね」(映画プロデューサー・松本整氏)
 
 まさに童話「北風と太陽」でいうところの、太陽のような対応。そもそも北風のような対応、ようは「怒る」というやり口は、やり場のない感情を発露させることであり、上司側が下のものに「圧力」を与えて言うことを聞かせようとする行為にあたる。
 
 怒ったからといって、生じている事態の根本的な解決につながるものではない。それどころか怒られた側は萎縮し、理不尽に感じたなら不満を感じモチベーションを低下させ、双方ともに嫌な思いをするだけ。

 部下を非難し責めることで、リーダーの一時の感情のはけ口になり、その場しのぎで部下に緊張感は芽生えるかもしれないが、本当の意味での成長につながっているかと言えばそうとは言えないだろう。おそらく、ミスをした側には、彼や彼女なりの言い分や主張がある。
 

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ミスをした人の「人間性」を否定しない