警察庁が入る庁舎(C)朝日新聞社
警察庁が入る庁舎(C)朝日新聞社
サイバー攻撃に24時間体制で対応する警察庁のサイバーフォースセンター(C)朝日新聞社
サイバー攻撃に24時間体制で対応する警察庁のサイバーフォースセンター(C)朝日新聞社

「この時を待ちに待っていた。米国のFBIのようにようやく手足を持てる。サイバー攻撃は今や国家レベルで行われていて、地方警察の対応では追いつかないという危機感があった」(警察庁幹部)

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 警察庁は国の基幹産業や重要インフラへのサイバー事件に対抗するために「サイバー局」を創設し、全国から捜査員を集めて独自で捜査に当たる「サイバー直轄隊」を発足させる方針を発表した。

 警察庁幹部によると、警察庁が逮捕権などを行使できる捜査部隊を持つのは1954年の同庁設置以来、初めてとなるという。サイバー局は2022年4月、サイバー直轄隊は22年度内に設置される見込みだ。

「現在のサイバー攻撃対策は不正アクセスなどのサイバー犯罪であれば生活安全局、国家をまたぐようなサイバーテロは警備局が担当するということになっていたが、この担当分けでは通用しなくなっていた」

 サイバー直轄隊は関東管区警察局に設置され、拠点は都内に設けられる。インターネットやサイバー捜査に精通した捜査員約200人を配置する方向で調整中だ。

 捜査の対象となるのは重大事件に絞られ(1)標的が行政機関や重要インフラ(2)捜査に高度な技術が必要(3)全国で同時多発的に甚大な被害が発生した場合を想定。捜索差し押さえや証拠解析、容疑者の逮捕や書類送検も可能となる。必要に応じて都道府県警との共同捜査や海外機関との連携を進めていくという。

 これまで日本警察は重大なサイバー攻撃には十分に対応できていなかった。ことし4月に宇宙研究開発機構がサイバー攻撃を受けた際には、警視庁公安部が迅速な捜査を展開。しかし「中国軍のサイバー部隊が関わった可能性が高い」と発表するに留まり、行為者の特定には至らなかった。

「各国は国家情報機関などが攻撃者を証拠に基づいて名指しするアトリビューションという手法を用いて中国やロシア、北朝鮮のサイバー攻撃に対抗してきた。ことし1月のコンピューターウイルス『エモテット』制圧作戦でも欧米8か国が連携して制圧したが、日本には声がかからなかった。国家をまたぐサイバー攻撃のカウンターパートが日本には存在しないとみなされたからだろう」(公安関係者)

 サイバー直轄隊はキャリアの警視正を筆頭に都道府県警察からの捜査員で構成されるが、カギとなるのはどれだけ即戦力で優秀な人材を確保できるかだ。

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サイバーに強い京都府警も招集