Q 「沽券にかかわる」の「沽券」とは?
A 土地売買などに用いる証文のこと

「沽」には「売る」という意味があります。「沽券」とは、土地や家屋などの財産を売買する際に、売り主が買い主に渡す契約成立を示す証文のことです。財産の価値を表すことから転じて、人の品位や体面の意味にも用いられるようになりました。

Q 浴槽は水に浮いていないのになぜ「湯船」という?
A 浴槽を船に載せた移動式の銭湯があった

 もともと日本の風呂は蒸し風呂が中心でしたが、江戸時代になると湯につかる習慣が広まりました。その際に活躍したのが湯船です。浴槽を載せた船が、港湾や川、堀などを行き来しており、停泊する場所で人々は料金を支払って入浴しました。いわば、移動式の銭湯です。これが好評だったことから、銭湯が生まれたともいわれています。

Q 「丼勘定」の「丼」はカツ丼? 親子丼?
A 職人が身につけた腹掛けにあるポケットのこと

 この場合の「丼」は、最近ではあまり見られなくなりましたが、大工や左官などの職人が身につけた腹掛けにある大きなポケットのことです。職人たちは、そこにお金を入れておき、支払いの際は金額をこまかく確認することなく無造作に出し入れする風潮があったといいます。そこから、大まかな会計を「丼勘定」というようになりました。また、更紗(さらさ)や緞子(どんす)などでつくったお金を入れるための大きな袋も「丼」といい、江戸時代に若い遊び人が好んで使い、無造作にお金を出し入れしたことから、こちらを語源とする説もあります。

Q いかさま試合をなぜ「八百長」というの?
A 八百屋の長兵衛からきている

 明治の初めごろ、東京・両国の「回向院(えこういん)」という寺院の近くに八百屋があり、長兵衛という男がいました。この通称・八百長は、伊勢ノ海五太夫という大相撲の年寄と囲碁をすると、常に1勝1敗でした。というのも、実力は長兵衛のほうが上でしたが、勝つと野菜を買ってもらえなくなると考え、わざと負けていたからだといいます。このことから、前もって負ける約束をしておいて、うわべだけの勝負をすることを八百長というようになりました。かつては相撲の勝負に限って使われましたが、今では広く勝負事に用いられています。

文/美和企画
※『みんなの漢字』2014年7月号から