カルト2世としての苦悩を語った寺沢里香さん(撮影/作田裕史)
カルト2世としての苦悩を語った寺沢里香さん(撮影/作田裕史)

 日本は信教の自由があり、どんな信仰を持とうと自由である。だが、親の宗教によって、その子どもが苦しんだり、人生の選択を制限されたりするケースがある。その教義が特殊なものであるほど、子どもは苦悩し、生きづらさを抱えることが多くなる。いわゆる「カルト(※)2世」問題だ。AERA dot.では「カルト2世に生まれて」として、親の信仰によって苦しんだ2世たちのインタビューを短期連載する。第4回は、「神の子=特別な子」として特殊な育てられ方をした2世のケースを紹介する。

【写真】母親から「色情魔」と罵られたカルト2世の女性

※カルトは「宗教的崇拝。転じて、ある集団が示す熱烈な支持」(大辞泉)とあり、本稿でもその意味で使用している。親が子に信仰の選択権を与えないほどに熱狂的な信者であり、そうした家庭環境で育った子どもを「カルト2世」と定義している。当然ながら、本稿は教団の教義や信者の信仰を否定するものではなく、一部の2世が感じている“生きづらさ”に焦点を当てることを目的としている。

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 寺沢里香さん(30・仮名)の日課は、毎日朝6時、夕方6時に神棚に向かって祈ることだった。

「正座して二拍一礼してから、悩みや報告したいことを心の中で伝えます。夕方は6時までに帰宅できないことも多いので、外出先で心の中で祈願したり、帰宅してからお祈りしていました」

 親が信じている宗教を、生まれた時から一緒に信じるのは「カルト2世」にとってはごく自然のこと。里香さんも生まれてすぐに入信させられ、毎日のように母親から「本当の神様を信仰する家庭に生まれてよかったわね。あなたは幸せ者よ」と聞かされて育った。

「母は口癖のように『世の中には子どもをきちんと育てられない親がたくさんいる。虐待するひどい親もいる。でも、私は世界一いい母親。あなたは他の家庭に生まれていたら、不幸になってたのよ』と言っていました。私自身も常に『あなたは特別な子ども、神の子なのよ』と言われ続けたせいか、小学生の頃には自分は選ばれた子どもだから神に守られている、と安心感を持っていたほどです」

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母親が行っていた“神様探し”