国内のみならず、海外メディアも新型コロナウイルスの感染拡大が収まっていない状況での東京五輪の有観客開催を疑問視したが、政府のシナリオ通り、すべてが進められている。

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 東京五輪・パラリンピック組織委員会の橋本聖子会長、東京都の小池百合子知事、丸川珠代五輪相、IOC(国際オリンピック委員会)のトーマス・バッハ会長らによる5者協議で21日、観客の上限について最大1万人とすることを決定した。

 政府の分科会の尾身茂会長ら専門家有志による提言では「無観客が最も望ましい」とされたが、「感染者が増えたら無観客を検討する」という条件をつけて押し切った。

 さらには組織委員会が会場で観客への酒類の販売を認める方向で調整していることも判明。時間帯などに制限を設けるとみられるが、飲食店への規制を強めてきた中での露骨な“五輪ファースト”に猛反発が起こっている。政府関係者がこう語る。

「緊急事態宣言解除を決める1ヵ月ほど前から実は東京五輪の有観客上限1万人は死守、開会式の時は2万人という案は事実上、暗黙の了解でした。分科会の尾身会長、組織委とも何度も事前調整を重ねてきました。酒類販売も五輪スポンサーに配慮してやむを得ないという判断ですね。五輪開催を決めても内閣支持率は上向きませんでしたが、菅首相はもうすぐ告示される東京都議会選挙が事前調査で自民党が圧勝の勢いで上機嫌です。就任以来、久々に勝てる選挙だと言って、出陣式にも出たがるほどのハシャギようで東京五輪への批判なんてどこ吹く風です」

 丸川五輪相も東京五輪での酒類販売について「組織委員会が検討していると伺っている。知事との連携、調整も十分に配慮して相談した上で決めていくことが必要」と会見で理解を示したが、意外な人物が「待った」をかけた。

 自民党の二階俊博幹事長だ。22日の定例会見で東京五輪の会場で観客に酒類を提供することについて個人的な意見とした上で、「五輪会場は禁酒を検討する必要がある」とぶち上げたのだ。

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五輪成功で衆院選勝利のシナリオ