写真はイメージ(GettyImages)
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 コロナ禍での妊娠・出産・育児は、母親に大きな不安やストレスを与えているといわれる。低出生体重児を出産した母親は、平時でも「子どもを小さく生んでしまったのは私のせい……」と自分を責めることが多い。さらには、コロナの感染拡大を気にしながら出生後の医療的ケアでメンタルヘルスの悪化も懸念される。

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 そんな母親たちにNICU(新生児集中治療室)のスタッフはどのように接しているのだろうか。 国立成育医療研究センター新生児科の対応について聞いた。

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 人口動態によると、2019年に生まれた子どものうち、出生体重2500g未満で生まれた「低出生体重児」は、男児8.3%、女児10.5%。2005年ごろからは横ばいが続いている。低出生体重児は出生後に医療的ケアが必要になる場合も多く、必要と診断されたら、出産後ただちにNICUに移される。

 出産という大きなイベントを乗り越えた母親は、わが子の産声を聞き、自分の手で抱くことで、出産のつらさを忘れ、幸福感に包まれるものだが、NICUに搬送される場合、一度も触れることなく、目の前からわが子がいなくなることもある。そんな母親の落胆や孤独感はどれほど深いだろうか――。

 同センターでは新生児をNICUに搬送する前に、必ず母親に触れてもらうという。

「新生児には、手のひらに何かが触れるとギュッと握ろうとする把握反射があるので、お母さんの指が赤ちゃんの手のひらに触れるように導き、『わが子が自分の手を握った』と実感してもらえるようにしています」と話すのは同センター新生児科の和田友香先生。

 その後、「NICUで預かりますね」と声をかけて搬送する。この言葉には、「育児の主体はご両親。病院は赤ちゃんがご両親の元に帰れるようにサポートする」という思いが込められているのだ。

 出産時は産むことに精いっぱいで現状を把握しきれていないことも多く、NICUでわが子に初めて対面したとき、「こんなに小さくて育つのだろうか……」とショックと不安で落ち込む母親も少なくない。

「『お母さんがここまで頑張っておなかの中で育ててくれたから、赤ちゃんも頑張って大きくなろうとしているんですよ』と声をかけ、心の負担が少しでも軽くなるように努めています」(和田先生)

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「小さくて大丈夫?」自分や夫の両親から心ない言葉も